おっぺけ四人組、今日もゆるーく活動中。【オリジナル】 (ページ6)

今日:23 hit、昨日:0 hit、合計:14,692 hit

おっぺけ日誌その２ページ6

『この国は１区から３９区までに分かれています。ちなみに当マンションは３２区に位置します。』

あの後受付に着いた私達は、係員という名のロボットの説明を聞いていた。…一人を除いて。

ガサッ、ガサァ…

係員の説明を聞き始めて約三分が経った位の事だった。
早くも集中力と言うものが切れてしまった『奴』は、受付周りをウロウロし始めた。
置いてあるソファに寝転がってみたり石像と同じポーズを取ってみたり、その様子は自由そのものだった。
「じっとしてろ」と注意すると『奴』は私達の隣に戻ってきた。

のは良かったのだが。

ガサッ、ガサァ…

『奴』もとい福沢は、
「ご自由にお取りください」の文字と共に置かれたお菓子の全てを、
満面の笑みでリュックに詰め込み始めたのだった。

「…福沢何してんの？」

耳障りなその音に、犬川は眉をひそめた。

しかしそんな犬川の心象に気付くはずもない福沢は、ガサガサとその動きを続け、顔だけをこちらに向かせた。

「えー？だって『ご自由にお取りください』って書いてるよ？取っても良いじゃん！｣
「お前は大阪のオバハンかッ！腹立つからその笑顔やめろ！」

思わずツッコミを入れてしまった私の横で奥沢は我関せずと言った様子でスマホを触っている。こちらも腹が立つので両耳につけたイヤホンのコードを勢いよく引っ張ってやった。

「ぅあ”あ”ッ！？」
「ぅおうっ」

予想以上のリアクションにこっちまで驚いてしまう。
スマホから流れてきた音楽からして、奥沢がやっていたのはリズムゲームだった様だ。

「…良い所まで行ってたのに」
「嘘つけ。メガネ掛けてないお前は本気じゃないって知ってる。」

しょげた様子でこちらを見てくる奥沢だったが、それは「ゲームしてていいよ」と言う許可が欲しいだけの行動なのだと言うことを私は知っている。

「…バレてたか。」

予想通り奥沢は舌打ち混じりに小さく呟いた。

「ってかさ私達、説明聞いてなくね？」

ふいに犬川が呟いた。
それとほぼ同時に、
『…以上で説明を終わります。御清聴ありがとうございました。』
と言う無機質な声がフロアに響いた。

待ってくれ、全然御清聴していないんだが。

『まもなくインストラクターが到着致しますので少々お待ち下さい。』

係員ロボットはそう言って黙り込んでしまった。電源を切られたのだろう。

とにかくインストラクターが人間であることを願い、私達はその場で待つことにした。