2話 奥沢との登校 ページ4
「…前川ごめん、待った！？」
昔の友人のことを思い浮かべていたその時、聞き慣れた声に振り返る。後ろから走って来たのは奥沢だった。
あぁ、そうだった。私は今いつもの通学路で、友人の奥沢律(ｵｸｻﾞﾜﾘﾂ)を待っていたのだった。
奥沢は近所に住んでいる、小学校からの幼なじみだ。
寝坊でもしたのか、今日は多少髪が乱れており、肩で息をしている。これは結構走ってきたな。
「いや、そんなに待ってないよ」
正直自分がどのくらい奥沢を待っていたのかは分からないが、良いように返しておく。
「それ、なら、よかっ、た…」
ｾﾞｴｾﾞｴと荒い呼吸混じりに奥沢は答える。
大丈夫かこいつ。
行こう、と言って学校へ歩き出してから少し。
奥沢の息がだいぶ落ち着いてきた辺りで話しかける。
「…深夜までゲームして寝落ちした？」
アスファルトで舗装された道の車道側を歩く奥沢は、少しだけ口元に薄く笑みを浮かべてこちらを向いた。
「…何でわかるの」
戸惑いも混じるその顔に思わず笑ってしまう。
「…ふふっ、幼なじみの勘かな？てか始業式の前日くらいちゃんと寝なよ」
「どうしてもやっときたいゲームがあったんだよね…」
「知るか」
待ち合わせ場所から学校は十分もかからないのでその後特に会話という会話は無かった。
それも私達の日常の風景だ。
「クラス表、貼られてる」
正門を通って少し進んだ先の人だかりを奥沢は指差す。私はその先をつられるように見る。
女子の赤を基調としたネクタイからして、あれは新二年生だろう。
時雨ヶ丘学園は学年によってカラーが違う。
今年だと一年が緑、二年が赤、三年が青だ。
そのカラーは制服のネクタイの色やボタンの色に反映される。とは言え男子は黒学ランなのでほぼ反映されていないと言ってもいいが。
ちなみに三年間同じカラーなのでネクタイ等を買い足す必要は無い。
ただ私個人としては、学年カラーは赤が良かった。
元々制服が青を基調としたカラーリングなので、赤色はワンポイントになって単純に可愛いのだ。少し羨ましい。
自分達の学年のクラス表を見るために新三年生の靴箱に向かう。三年生の靴箱は正門から一番遠いのが少し不便だ。
そう思いながらも歩く途中で、見慣れた二人組を見付けた。
高身長でアホ毛が目立つ黒髪女子と、低身長ながらに謎の存在感を放つ茶髪女子。
「あいつら後ろ姿でも分かり易いな」
「確かに」
ふと笑ってみると、奥沢も私と同じような顔をしていた。
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虎珀(前川)(プロフ) - ありがとうございます！！だらだら更新していますが今後も読んでいただけると嬉しいです…！ (2017年6月11日 17時) (
レス) id: e92529ad64 (このIDを非表示/違反報告)
ひげちゃん(プロフ) - とても面白かったです！リアル忙しいと思うけど更新頑張ってください笑笑応援してます(´ω`＊) (2017年5月31日 21時) (レス) id: ec25b2831b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：片桐(前川) | 作成日時：2017年4月23日 21時
