M (ページ6) - 小説/夢小説

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『え…？』ページ6

「…。」

『…落ち着いたか？』

「ｷﾞｭｯ…。」

『……はぁ。』

服を掴まれて大声で泣き出されたもんだから身動きをとることが出来ない。だから、私は諦めて泣き止むまで待っていた。

が、泣き止んでも服を離してくれない。なんなら、服を掴んでいた手を一瞬離し私に抱きついてきた。

抱きつかれてからも『離せ』「嫌だ」と押し問答を続けていた。

『いい加減離そうか、クソガキ』

「嫌だ、え…」

『漸く離したな…全くどんだけ意地っ張りなんだよ。』

しばらくしてお腹の辺りにあった圧迫が無くなり、漸く離してくれたと思ったら、クソガキはその場に倒れた。

『え…？』

情報把握に少しだけ時間がかかった。

それもそのはず、私がこの島で一人暮らしを始めてから５年が経っていた。更に故郷でも他人と関わることを極力避けていた。だから人が倒れるなんて場面にあったことが無い。

『おい、生きてるのか？』

返事はないが、乱れた呼吸をしているため生存は確認した。

『…ったく、世話のやけるクソガキだな。』

とりあえず運ぶか、と倒れたクソガキを抱えた。クソガキの体温はかなり高かった。

『まあ、海から流されて来たからなー。まだ完全に体調が治った訳じゃなかったんだな。』

はあ、めんどくさい。とため息をつきながら、私はクソガキを寝かせていた布団まで運び、寝かせておいた。

『さて、何から始めっかなー。』

クソガキを生かしてしまったため、服やらなんやら準備をしなければいけない。

それにしても『海に返す』と言ったときの反応…あれは恐怖からくるものだった。ただ泣くだけでなく目を見開き、まるで絶望といった表現がしっくりくる。

『(しかし、あんなガキでもプライドの高さは一流だった。天竜人で間違いないはず。ガキとは言え天竜人は天竜人。天下の天竜人があんなボロボロで海から流されて来た。一体どういうことだ?)』

『…ってなんでクソガキのことを懸命に考えてんだよ。』

いつの間にかクソガキのことで頭がいっぱいになっていた。

『…そうか、私もまだ人であったか。』

自分から他人との繋がりを避けていた。そのはずなのに、心のどこかで寂しさを感じていたのかもしれない。

もしかしたら私は人ではない化け物なのか。

考えても答えが出ない疑問を、作業をしながら考えていた。

しかし、

ー自分ではない誰かを助けた。誰かを思って行動する

その事実が、まだ私は人であると教えてくれている。

そんな気がした。