『何だあれ』 ページ4
何もないこの島に住み始めて５年が経った。
この島は無人島で人が住んでいる形跡もなかった。故郷の本屋で見つけた自給自足の本を片手にこの島に来た。
化け物でも何でもないただの人間が一から生活の基盤をつくり、生活を安定させるにはかなりの年月がかかった。
食糧確保、拠点の整地、安全の確保…。
故郷に住んでた頃はお金があればなんとかなったけど、此処ではそうも行かなった。何をするにも一人でこなし、大変だった。
しかし、
誰かに何か言われることもない。
夢がなくても生きているだけで１日が終わる。
毎日が忙しく考えるのは目の前のことだけ。
それが私にとっての救いだった。
ただ、５年も毎日同じことを繰り返していれば人間は慣れてくる。
どれくらい慣れたかというと作業中に考え事をするレベル。例えるなら食糧調達のときとか。
「今日は何しようかな」
けれど、たまに何も考えたくないときが来る。
そんな時、私は海を眺める。さざ波の音を聞きながら水平線をぼーっと眺めているといつの間にか太陽が水平線に隠れていく。そしたら私は家に帰る。
しかし、今日はそうできないようだ。
『何だあれ』
水平線を眺めてぼーっとしていたら、何かが流れている。
気になり、私はその漂着物のもとへ向かった。
『なんだこれ』
驚いたことにぼろぼろの服を着た金髪の子どもが木にしがみついて流れてきたのだ。
「…！体温が低下してる。そりゃそうか、脈は…まだあるか。とりあえず家に連れて帰るか。」
私は奇跡的に生きている子どもを今住んでいる家に連れて帰った。
他人が嫌いな私がなぜこのガキを連れて帰ったかというと異臭を放たれたら困るからだ。
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作者名：とある居酒屋の店主 | 作成日時：2020年1月20日 16時
