恋を知るにはまだ早い (ページ8)

今日:9 hit、昨日:1 hit、合計:16,016 hit

. ページ8

「ちょっとそれ貸して」

「えー、まあちょっとなら見せてあげても…って、こら！奪い取るな！」

右手でひらひらと泳がせていた便箋はいつのまにか猪狩の手によって奪われていて。普段はお互い馬鹿ばかりやっているけれど、私だって本気出せば告白の一つや二つくらい余裕だもんね。
どうだ猪狩、驚いたか。

「おーっと、手が滑ったァ～～～！！！」

「は？…は！？」

ドヤ顔で悦に入っていたのもつかの間、大人しく手紙を読んでいたはずの彼の机の上にはビリビリになった無残な手紙の姿。

「な、に…すんの！？本当ありえない最低最悪！」

「吉田って、あいつ俺よりかっこよくないじゃん」
　

「そういう問題じゃない！」

手紙を破られる事と吉田くんより猪狩がかっこいい事の関連性が全く感じられない。ていうかなんで破られたんだ。吉田くんが何をしたっていうんだ。満足そうに弧を描く唇がやけに腹立つ。

「今日行くの？放課後」

「行くよ、折角勇気出して手紙くれたんだから。誰かさんに破られちゃったけど」
　

「べつに行かなくてもいいんじゃない？」
　

「はあ？なんで」

「だってAには俺がいるじゃん」
　

破られた手紙の欠片を集めて回収。いやいや、冗談言ってる場合じゃないんですけど。呑気な事を言っている猪狩を睨みつけると特に悪びれる様子も無く。なんだこれ、おちょくられているのだろうか。

「えー、猪狩があ……？ていうか、そういうのって普通は好きな子に言うもんじゃないの？」

「俺はAのこと好きだよ」

「へ」

「もちろん、そういう意味で」
　

突然の衝撃発言に驚いて飛び上がれば、ガタガタと机が音を立てて揺れる。だけどそんなのどうでも良くて、目の前にはしてやったりの猪狩の顔。

「どう？俺と付き合った方が絶対幸せになれると思うけど」

細い目を更に細めて笑う顔がやけにかっこよく見えるから、これはまさか恋に落ちてしまったのだろうか。
あいつの自信がどこから湧いて出たものかは分からないけれど、なんだか猪狩となら幸せになれる、そんな気がする。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

文字数の関係上変なところで切れてます；；すみません

過去にTwitterに載せていた作品ですがお気に入りなので再アップ