恋を知るにはまだ早い (ページ6)

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私と作間くんが付き合う？なんで、

状況が飲み込めず呆然とする私に一歩、また一歩と詰め寄る作間くん。突然の展開に身体が硬直してしまい、人ひとり分空いていたはずの距離は縮まるばかり。

「俺、ずっと先輩のことが好きだったんです。明るくて、頑張り屋で、自分よりも周りを優先する先輩が」

彼の手が伸びて来て、するりと髪を撫でる。相変わらず微笑みを浮かべたその表情の真意は読めない。

「だからあの飲み会の帰りに想いを伝えようって。そう思ってたんですけど課長とか髙橋さんとか、先輩にどんどん飲ませるものだから "ああこれ言える雰囲気じゃないな" って」

「…で、酔い潰れた私の介抱を自ら名乗り出て、思い切って告白してみたら受け入れられた、と…」

ある程度の冷静さを取り戻し、けど、と続けた作間くんの言葉を遮るように重ねれば「正解です」とまた嬉しそうに笑う。

まずい、大変な事になってしまった。目の前の作間くんはもう完全にその気だし、彼の話が本当であれば私は私で全く見に覚えのない返答をしている事に対しての呆れと、本日何度目かの申し訳なさに襲われる。

だけど、それにしたってどうしてそんなタイミングで告白なんてしたのか。ほぼ意識のない相手に、なんてハイリスクにも程があるのに。

「…作間くん、あのね。それは、」

「……嘘です、冗談。本当は分かってます。判断力が鈍ってる状態の先輩に告白して返事貰ったところでそれが本心かなんて分からないですし」

とりあえずこの状況を切り抜けようと頭を働かせていた最中、案外物分かりの良い彼に思わず胸を撫で下ろす。

よかった。告白には正直驚いたけど彼はただの後輩で、一度もそういう関係になるなんて考えた事すらなかったから。やっぱり作間くんは素直で、優しくて、いい子で。自慢の後輩。

「でも先輩、知ってましたか？」

なんて、ほっとした私が馬鹿だったのだ。

瞬間、手首を勢いよく引かれ、バランスを崩し傾いた身体は彼によって支えられる。いや、支えられたというよりも腰を抱かれて、そのまま唇が重ねられた。

ああ、なるほど。彼の本当の狙いは、

「どんなに従順な犬だって、噛みつく時くらいありますよ」

「っ、作間くん！」

「これで少しは男として意識してくださいね、センパイ。じゃあ俺あっちなんで」

彼の狙いは" 私を意識させること "

やられた。そう思ったってもう遅い。
この心臓がどきどきと高鳴る訳は、きっと。