恋を知るにはまだ早い (ページ2)

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「……なにしてんの」

「………んん…、……へ…」

突然間抜けな声を上げたのは、グラウンドにいたはずの髙橋の声が聞こえたから。

「そこ、俺の席なんですけど」

「っ、ごめん」

慌てて退いた後、ふと時計に目を配れば時計は下校時間18時間近の17:57を指していた。先程まで元気に声を発していた窓の外の運動部達も、皆すでに後片付けやコート整備を終えてぞろぞろと帰り始めている。どうやらかなりの時間寝てたらしい。

というより、寝起きで頭が回ってなかったけれど、改めて考えると自分めちゃくちゃ大胆な事してたんじゃないのか。人の机、それも髙橋の机で寝ている所をまさか本人に見られるなんて。

穴があったら入りたいとはまさにこの事。
恥ずかしい。何か言われる前に早く帰ろう。

「あれ、古典、古典……」

「……」

「おっかしいな、どこやったんだろ」

そんな私を気にも留めず、当の本人は悠長に教科書とプリントがこれでもか！というほど詰め込まれた机をごそごそと漁る。

そりゃそうだ。私が髙橋の机に座っていようが向こうにとってはどうでもいい事。分かってはいたけれど、理由すら聞かれないとなれば少し悲しいような寂しいような。我ながら学習しないなあ。

「えー、マジでない…。明日の小テストどうしよっかな」

「…じゃあ、私帰るから」

「あ、帰んの？外暗くなって来たし送って行ってやろっか？」

流石に何も言わないのは、と少し勇気を出して掛けた言葉に返って来た予想外のレスポンス。驚いてそちらを見ればばっちりと目が合って、思わず目を逸らす。

「い、いらない！一人で帰れる」

「でもこっから駅まで遠いだろ、危ないじゃん」

「そんなの毎日通ってる道だし平気だよ」

「そんなこと言って、お前先週不審者出てたの知らねえの？何かあったらどうすんだよ」

「だからいいってば。大体、髙橋だったら居ても居なくても一緒だし」

「………………なにそれ」

「………あ…」

ひた隠した気持ちが悪い方に形を変え、言葉として表れた頃にはもう遅い。形のいい眉が怪訝そうに皺を寄せていく。

本当に、学習しない。