【©®+α 短編集】夢だけはみさせろ (ページ7)

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【v】一喜一憂(1) ページ7

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俺の気になる人は、ゲーム実況やゲーム配信といったものに全く興味がないらしい。
何故なのかと尋ねれば、ゲームは見るよりも自分でプレイする方が面白いからだと言っていた。間違いないと思った。

俺はゲーム配信をする側の人間だが、彼女にまだ自分の職業を打ち明けられずにいる。ゲーム実況や配信に興味が無いというだけであって、話したところで特に嫌われるようなことも彼女に限っては無いとは思う。ただ、彼女が俺をVanillaだと知らずに接してくれているこの状況が心底心地良いとも感じていた。

だからこそ安心していた。

『最近あの人の配信を見始めた』

彼女からそう聞かされるまでは。

「配、信…？」

『そう』

彼女の口からその単語を聞いただけで、心臓が大きく脈打つのを感じた。
落ち着け…一言で配信と言ったって色々ある。
芸能人の雑談配信かもしれないしYouTuberの企画配信かもしれない。よりによって今まで興味を示さなかったゲーム配信ということは恐らく無いだろう。

…ないよな？

「あの人って？」

『名前なんだっけ…えーと、ゲームやってる人』

ゲームやってる人じゃん…！

「え…ゲーム配信者？」

『まだ詳しくは知らないが、そうだと思う』

ゲーム配信者じゃん…！

「マジか…え、何で？今まで興味ないって言うてたやん？」

『そうなんだが、見てみたら案外面白かった』

「そ、そうなんだ…」

『その人しか見てないから分からないが、その人が特別面白い気がする』

「へー…」

特別面白い、ね。

Aにそこまで言わせるなんて…どこのどいつだ？

「…何で急に見てみようと思ったん？」

『あー、YouTubeのオススメにその人の動画が出てきてな。興味は無かったんだがうっかり誤タップで再生してしまって、それがきっかけだな』

「そうなんだ…え、誰？」

『何でそんな聞きたがるんだ？』

「え゛っ！？いや…ただの興味だけど、俺も見た事ある人かなーって…」

『ふーん』

「うん…」

何かもう、情緒不安定になりそう。

ゲーム配信を見始めたという情報すらもまだ飲み込めていないというのに、更に特別面白いとまで評価している。俺だってストリーマーだ。プロとして譲れない意地というものが多少なりともある。
Aが面白いと言っているそいつは、俺よりも面白いのか？
そんな思いが心を蝕んでいく。