【a】幼馴染(1) ページ5
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この気持ちをいつ伝えよう。
今ではない。もっといいタイミングがあるはず。
そう言い訳をしながら気付けば随分と長い時間が経っていた。
幼馴染みのAに想いを寄せ早十数年。
ずっと昔から一緒にいるのが当たり前で、それがとても心地良かったからこそ伝えることが出来なかった。Aもきっと俺と同じ気持ちなんじゃないかと思う瞬間は何度もあったが、結局いつも確信を持てずにいた。
せめてまともに働いて、しっかり稼げるようになれば自信もついて告白も出来るのではと思った時期もあったが…気付けば俺はストリーマー。とても安定した職とは言えず、自信は無くなるばかりだ。
ピンポーン
そんなマイナス思考を巡らせていると自宅のインターホンが鳴り響いた。インターホンに映し出された人物を確認すると、そこにはつい今まで思い悩んでいた原因の姿。
今日もかわええなぁ。
久々に見る彼女に綻ぶ顔を抑えながら部屋へ迎え入れる為に玄関へと向かう。ドアを開けると『久しぶり』と言いながら幼い頃と変わらぬ笑顔を見せる彼女が立っていた。その姿を見て思わず抱きしめたくなる衝動を堪え部屋に招き入れる。
彼女は先程まで俺が思考を巡らせていたソファに腰掛け小さく息をついた。
「お疲れ。ちょっと待ってて、お茶淹れるから」
『ありがとう、おかまいなく』
「あ、おかまいなくて良いならお茶も要らんね？」
『おかまいありで』
「はいはい」
彼女は紅茶が好きだ。ティーポットやティーカップなどという上等なものは無いが、代わりに彼女の気に入っているという茶葉のティーバッグを常備するようにしていた。
お客様用とは別に用意した彼女用のマグカップを棚から取り出し、ティーバッグを入れお湯を注いでいく。紅茶の美味しい淹れ方までは詳しくないので、その状態のまま彼女へ渡せば彼女は満足そうに紅茶の飲み頃を待つ。
「…で？ 今日はどうしたん？」
『 何が？』
「いや、何か言いたいことあって来たんやろ？」
『いや別に無いけども』
「え？」
予想外の返答に思わず声が出る。そんな俺を見て彼女は笑いながら言葉を続けた。
『最近体調崩してたらしいじゃないか？』
「…誰から聞いたん？」
『お前の配信で聞いた』
「あー」
『だからちょっと気になってな。まぁ顔色見る感じ大丈夫そうで良かった』
「ごめん、心配かけて」
『良いよ。強いて言うなら、次体調崩したらその時は連絡しろ。看病来るから』
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作者名：之 | 作成日時：2023年5月6日 17時
