【©®+α 短編集】夢だけはみさせろ (ページ36)

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【v】鍵(4) ページ36

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心の中でお邪魔しますと呟いてから扉を開ける。
玄関からリビングに繋がる廊下を見渡す限り人の気配は無く、やはり彼女は配信部屋に居るらしい。靴を脱ぎ揃えてから上がり込み、彼女が居るであろう配信部屋のドアをノックする。反応は無い。

「入るよ」

念の為声を掛け返事がない事を確認してから部屋へ入ると、PCの前に座ったまま寝落ちしている彼女の姿があった。ノックをしても声を掛けても起きないだなんてよっぽど疲れているのだろう。相変わらず配信にはゲーム画面が映し出されたままになっており、チャット欄には《今声した？》《えっ誰？》と困惑のコメントが流れていた。

「あー…どうもVanillaです。A寝てるんで、このまま配信終了しますねー」

《なんだVanillaさんか！》
《良かった来てくれて》
《何で居るの？》
《同棲！？》

「同棲ちゃうわ！ちょっとあんま声出すと起こしちゃうんで…それじゃあ、お疲れ様でーす。おやすみなさい」

言って早々に配信終了ボタンを押し、ゲームも終了させPCの電源を落とす。それから彼女を配信部屋から寝室へと運び出す為に彼女の身体へ触れると、『ん……』という声と共にゆっくりと目を覚ました。

「あ、起きた？」

『…ばに……？』

「ほら、寝るならベッド行きな」

『う、ん……わかった……』

彼女はふらつく足取りで立ち上がり、寝室へと歩き出す。様子を見守る為彼女の後を着いて行くと、途中でピタリと歩みを止め俺の方を振り返った。

『……あれ…配信』

「あ、ごめん勝手に終わらせた」

『へぇ……ん？ばには、なんでここに…？』

「Aが配信したまま寝落ちして放送事故みたいな感じになってたから止めに来た」

『あらー…』

「あらーってw」

『ばには何で気付いたんだ？配信みてたのか？』

「Aリスナーから連絡来た。Aさんが寝落ちしてますって。自分に何かあったら俺にDM送れって言ってたから連絡したみたいなこと書いてあったわ」

『うちのリスナーは優秀だなあ』

「本当にな」

『ばにも優秀』

「はいはい、良いからはよ寝な」

『鍵、渡して良かった』

「えっ」

『ふぁ〜』

「……」

彼女がどう言った意味で今の言葉を言ったのかは分からない。だが、もしどんな意味であったとしても、彼女に振り回されるのは嫌いじゃない。そう思いながら彼女をベッドへ放り投げる今日この頃だ。

まさかあの鍵ってこういう時の為に渡され…
いや、あまり考えないようにしよう。