【v】鍵(2) ページ34
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「まぁ。そうやけど…いや、でもさ。Aが配信してる時とかに入っちゃったら？」
『そしたら2人で配信したら良いだろ？リスナーだって私達の仲の良さは知ってるわけだし』
それって視聴者に俺と付き合ってると思われてても良いって言ってるのと同じでは…
えっ告白…？
俺、もしかして今告白されてる？
「っAが風呂入ったり着替えたりしてる時に入ったらどうするん！？」
『脱衣所に入るな。寝室に入る時は必ずノックしろ』
そしたら事故は防げるだろ？とAは得意げに笑う。それは、そうかもしれないけど…！
『嫌だったか？』
「全くもって嫌では無い」
『強めの否定で安心した』
「むしろウェルカム」
『何でバニがウェルカムなんだよ。ウェルカムはこっちだ』
「今更嘘は無しよ？」
『しつこい。ほらもう渡す物は渡したから帰れ』
そう言って彼女は玄関ドアを大きく開くと、俺は呆気なく外へと追い出されてしまった。
「あー…その、近々使わせてもらうわ」
『ん、わかった』
「じゃあまた」
『うん』
ガチャリと音を立てて玄関が閉まる。少し浮ついたような足取りでエレベーターのある方へと歩みを進めた。
「……」
エレベーター前まで来るとくるりと身を翻し彼女宅へと引き返す。足音で気付かれる事は無いだろうが、なるべく音を立てぬようゆっくりと歩いた。彼女の部屋の前で立ち止まり大きく深呼吸すると、先程貰ったばかりの鍵を鍵穴へと差し込む。鍵を回せばカチャリと解錠の音が鳴った。
ドアノブに手をかけ扉を開くと
『来ると思った』
玄関先で待ち構えていた彼女に迎えられてしまった。
「バレたか」
『近々使うって言ってたからな』
「うーわ、普通に読まれてるやん」
『何やかんや長い付き合いなんで』
悪戯っ子のような笑みを浮かべながら彼女が言う。
その表情はどこか満足気だ。
「それで、どう？合鍵使われた感想は？」
『来るって分かってたから感想も何も』
「俺はね、好きだなって思った」
『え、鍵が？』
「………。合鍵使ってる俺が？」
『……何が何だって？』
「俺もよく分かんねーや」
『何だそれ』
こういう緩いやり取りとか、その時のAの表情とか、声とか、こういう空間含めて全部
そう思った。
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作者名：之 | 作成日時：2023年5月6日 17時
