【a】寝不足による(3) ページ32
オマケ
「あ、そう!そういえばね、携帯変えた!電源ボタン押したら電源消えるのマジ時代凄すぎ」
家でのんびりと過ごしながら彼の配信を視聴していると、身に覚えのあるエピソードが耳に入ってきた。
ストリーマーである彼と付き合っていれば仕方の無い事ではあるが、面白いことがあれば配信の話題として扱われてしまうため2人だけの思い出にならないのがたまに寂しくもある。そんな心中を知らぬ彼は、今まで使用していたスマホがいかにボロボロだったかを熱弁していた。画面は割れに割れ、背面のライト部分は度々落下し、まともに充電も出来なければ電源すらも機能しないという、中々類を見ない壊れっぷり。
そんな彼のスマホを新しく買い換えるべく携帯ショップへと赴いたのだった。
「何やこいつ!?って多分なってたんよなあの人…マジ申し訳ないわ。何がヤバいて、パジャマやし俺」
“パジャマ”という単語が出た瞬間、今朝の記憶が鮮明に呼び起こされ思わず声を出して笑った。遠目からでも分かるパジャマの巨体が爆走する場面なんて人生の内何度でも拝めるものでは無い。
「洒落た兄ちゃん姉ちゃんが居る中で、おい〜つって、買いに来たで〜つってw」
お前実際は「ヤバ、めっちゃ恥ずかしい…帰りたくなってきた。帰っていい?」って言ってただろ。
「何でパジャマで行くん?まぁ朝行くってなってて、昨日寝たのが…」
そういえば寝るのが遅くなって寝坊したと言ってたな。
「昨日ってか今日なんだけど。7時頃寝て」
!?
しちっ…7時!?
「で9時頃起きて。で、そっから行ってやから」
2時間睡眠じゃないか…何をしてるんだコイツは。配信してないで早く寝ろ。
目の前のスマホを手に取りLINEを開くと、配信前に送られて来たありさかからの[今日は付き合ってくれてありがとう]というメッセージが目に入る。
用事がある前日はもっと早く寝ろ。
しんどかったらキャンセルして良かったんだぞ。
時間なんていくらでもずらせるんだから、そんな遅く寝るなら連絡入れとけ。
小言の1つでも言ってやろうと思っていたが途端そんな気持ちも消え失せた。きっと配信中にメッセージを見ることは無いだろう。そう思いながらも短く[寝ろ]とだけメッセージを送り、引き続き彼の配信に耳を傾けた。
.
312人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:之 | 作成日時:2023年5月6日 17時