【d】その露出について(1) ページ15
.
今日は久々に彼の家で酒を嗜んでいた。
普段からあまり呑む方ではない彼が、珍しく口調が若干甘くなる程に酒を空けたらしい。
「あのさぁ〜」という伸びた語尾に酒の回りを感じながらも『どうした？』と返せば少しムスッとした表情を見せる。本当にどうした。
「前からさ〜思っとったことあるんやけど、言ってええかぁ？」
そんな切り出し方をされて良くないとは中々言えないだろう。少なくとも私には言えない。今から何を言われるんだ…？そんな不安を内心抱きつつも『どうぞ？』と続きを促した。
「…これとかさ、あの。ちょっと…露出激しない？」
そう言うと、目の据わっわた彼が私に向かってスマホを突き付ける。彼の不満が表示されているであろうスマホ画面を覗き込むと、そこには私が先日Twitterへとアップしたコスプレ写真が映し出されていた。コスプレといっても如何わしいものではなく、好きな漫画のキャラクターをコスプレしたものだ。
『露出…？』
「出過ぎやって」
『…そうか？』
「出すぎやろ」
『そうだろうか』
「どう見たって出すぎ」
改めて表示された写真を見返すも、至って普通のコスプレだ。彼の言う露出というものも特に見当たらない。至って普通の男性キャラクターのコスプレだ。強いて露出部分を上げるとするならば顔面と手ぐらいなものだ。
『えっと…手の部分のことか？』
「はあ？何が？」
『いやだから露出してるって』
「んなわけないやろ！何言っとん！？」
『だ、だよな。すみません…』
手が違うのであればもう顔面しかない。露出が激しいと言うのだから、恐らくもっと顔面を隠せという事を言いたいのだろう。しかし、コスプレをしている以上顔面を隠してしまってはあまり意味を成さない気もする。
『何で駄目なんだ？』
「へっ！？あっいや、駄目とは言ってやんのよ！？ただちょーっと露出多いかなーって」
『それは露出多いから控えて欲しいってことじゃないのか？』
「え〜…ちょっ難しい…控えた方がええとも思うし嬉しくもあるから」
『嬉しい…？』
「そらまぁ…嬉しいでしょ」
なるほど、彼は私のコスプレを見ると嬉しくなるのか。
………。
……そんなことあるか？
『いつもそんな事言わないじゃないか』
「恥ずかしいやろそんなん。よお言わんわ」
『そ、そうか』
嬉しいの次は恥ずかしいときた。
まさか彼が私のコスプレをそんな風に思っていたとは。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 312人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：之 | 作成日時：2023年5月6日 17時
