・ ページ8
数日後
ー喫茶ミシェルにてー
仕事終わりのマーコとタロウは、いつものようにコーヒーを飲みながらぐだくだとくだらない話をして笑っている。
そこへ、シンイチがやってきた。
「！シンイチー！！久しぶり！」
マーコは、久しぶりの再会を心から喜んでいるようだがその一方、シンイチとタロウはどこか硬い表情だ。
「お久しぶりっす。」
「お？なんか、ガタイよくなってない？すごいじゃん！やるねー！」
「あれから、俺なりにやれることやってみました。試合にも出ます。これ、チケットです。よかったら、見にきてください。」
相も変わらず、なにも話さないタロウに痺れを切らしたマーコが手渡されたチケットを受け取った。
「行く行く！！応援するからね！！がんばるんば！！」
「・・・はい。じゃ、」
去っていくシンイチの背中に手を振り、マーコはタロウに向かい合った。
「タロさん、行くでしょ？」
「あ？さーな。興味ねーよ。」
そっぽを向くタロウ。
マーコはその胸ポケットに、チケットを思いっきりねじ込んだ。
「！？なにすんだよっ！変態か！おめーは！！」
「待ってるからね！！！」
そう言って、駆けていくマーコを見送ってタロウは大きなため息をついた。
マーコのお願いには、めっぽう弱い自分が嫌になる。
本当は、朝の練習も遠くから見守っていたのだ。
マーコが傷つかないように。それだけを願っていた。
だから、あの時、マーコの思いを踏み躙るように「諦める」と言ったシンイチが許せなかったのだ。
ー試合当日ー
「もー、タロさんおっそいなぁ・・・始まっちゃうよ。」
会場前で、タロウが来るのを今か今かと待っているマーコ。
試合開始時間が、刻々と迫っていた。
「マーコさん！そろそろ始まります。席、取ってますから中に入りましょう。」
シンイチの彼女であるチカにそう誘われて、未だ現れないタロウに後ろ髪を引かれながらもマーコは会場へと入っていった。
場内は、独特の熱気で溢れている。
観客もなぜかアドレナリン全開だ。
「(ひぇ〜、シンイチ大丈夫かなぁ・・・ボコボコにされた上にブーイングとかされたらどうしよう・・・！共感性羞恥で死ぬっ！！)」
「マーコさん、よかったらこれ。」
そう言って手渡されたのは、「シンイチ」と書かれたカラフルなうちわだ。
イベントでよく見るあれ。
若干、引き攣りながらもそれを受け取ったマーコはこの先待ち受けている悲惨な未来に憂いを覚えていた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：サリー | 作成日時：2020年10月14日 17時
