第342夜 ページ9
『そういえば、最近上手くいってる？』
葡萄の皮を手で剥くという小作業に意識を向けつつ、僕は更に気を紛らわせようと適当な話題を隣の彼に振った
身ぐるみ剥がされた葡萄が皿の上を転がる
食べるわけでもないそれらが増えていく様子に、少しだけ達成感のようなものを感じていた
「……まぁまぁだよ。君に教えてもらった参考書がすごく役立ってるんだ」
『へぇ、それはよかった』
僕らの会話は傍から見たらただの世間話に見えるだろう
けれど僕らが今口にしているのは勉強やテスト対策なんかのことじゃない
アンブリッジ、ひいては魔法省に楯突く活動の話だ
常に潜んでいる敵に勘づかれぬよう僕らは隠語を交えて言葉を交わす
セドリックの言った"教えてもらった参考書"とは「必要の部屋」のことだろう
『順調なら何より。教えた甲斐があるよ。対策は早めに打つに越したことはないからね』
一通り皮を剥き終わると、僕は指についた果汁を行儀悪く口で吸った
……うーん、安物の味
それ以上口にする気が起きず、僕は久々に固形物を入れて重くなった腹を擦った
「君が直接教えてくれたら、もっと実りのあるものになると思うんだ」
突如、その言葉は投げかけられた
『……え？』
言葉の意図が理解出来ず、僕は怪訝な視線をセドリックに向ける
すると思いの外真剣な色をした瞳と目が合ってしまった
「僕だけじゃいつか限界がくる。君のような天才から教えてもらった方がためになると思うんだ」
だから皆の先生役を買って出てくれないか
そう、セドリックは瞳で訴えかけてきた
『……』
何を馬鹿なことを…と僕は呆れた視線を返す
ろくに感情もコントロール出来ない、魔法も使えない
人に迷惑ばかりかけている。人を傷つけてばかりいる
そんな奴に教師役が務まるかよ、と僕は鼻で笑った
『君は優秀だよ。N.E.W.T対策はご自分でどうぞ。僕は今クソほどの役にも立たないから先生役は他を当たってね』
大体、こんな情緒不安定な人間を仲間に入れたくはないだろう、誰だって
この話はおしまいだと席を立つ
「A」
立った瞬間に腕を掴まれた
痛くない程度に拘束された腕に視線を戻す
「気が向いたら何時でも言って。……待ってるから」
何を考えてるんだか…と僕は小さく息を吐く
闇に呑まれかけている奴に闇を祓う術を教える資格はないんだよ
僕はセドリックの腕を払い除けると、振り返ることなくその場を後にしたのであった
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ぽか - 面白すぎてすぐ読んでしまいました！すごく面白いですし、主人公の病みが出てきてワクワクしてます！完結して欲しい・・・！更新無理せず頑張ってください！ (4月19日 17時) (
レス) @page34 id: 8fb0247eee (このIDを非表示/違反報告)
まど - 読んでて物凄くわくわくしました！言葉や展開の言い回しが素敵で、実際にある国などついつい調べて何時間も費やしてしまいました幸せです。是非完結していただきたい…！無理せず更新頑張ってください！ (1月9日 21時) (レス) @page34 id: 6fc7e82b20 (このIDを非表示/違反報告)
ぴの - 凄く面白くて一日で見ました！！今から2週目見てきます！！！！更新頑張ってください！！！！ (12月24日 13時) (レス) @page34 id: 49fa55860c (このIDを非表示/違反報告)
ユーリ - はぁぁ！最高です♡♡また更新してください♡待ってます！！！お体にお気をつけて！ (9月12日 21時) (レス) @page34 id: eb702a756c (このIDを非表示/違反報告)
おパブロで。 - お、面白すぎてイッキ見しちゃった……(ﾟωﾟ)お身体に気を付けて毎秒更新して下さいね！！！！ (9月12日 0時) (レス) @page34 id: e2ea27c298 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ﾆﾉｺｺ
| 作成日時：2021年12月17日 17時
