第341夜 ページ8
(セドリックside)
『やぁ。隣空いてる？』
冬の寒さから隔絶された暖かな大広間
出来たての夕食を囲む生徒たちの背後から、突如静かな声が掛けられた
「A…」
僕は振り返ってここ暫く見かけていなかった友人の名を呟く
Aは僕の顔を見ると、返事も待たずに当然のごとくハッフルパフの椅子に腰掛けた
元々近くにいた生徒はソロソロと僕らから距離を取っていく
怯えた顔
関わりを避けようとする咳払い
交わらない視線
誰もがAの存在を遠ざけた
それも仕方の無いこと。先日の騒動は今や全校生徒の間で広まっていた
あれだけの騒ぎだったのだから当然だ
彼も周囲の反応を当然と言わんばかりに享受していた
珍しく食事でもするつもりなのか、気怠げな腕が机上をさまよっている
『コソコソ監視されるのがうざいから、いっその事目につくところにいてあげようと思って』
ようやく言葉を発したと思えばAはそんなことを口にした
彼の手の中で赤いリンゴが踊る
『今回は僕に全面的な非があるからねぇ……監視が厳しくなるのも仕方ない』
Aが一口リンゴを齧る
そのひと噛みは気を紛らわせるためか、どこか荒々しい
『おかげで気が休まらないよ。薬もマズイしさ〜。もうちょっと飲みやすいように改良してもいいと思わない？』
「うん、そうだね」
Aは僕に返事を求めているわけではなさそうだった
ただただ、自分の中の不満や苦痛をどうにかして抑えようと試行錯誤しているように感じた
味わうでもなく、作業のように咀嚼する彼の様子を見ながら僕は相槌を打つ
会話に思考を割き、食事で焦燥を紛らわそうとするその姿に僕は眉をキュッと寄せた
「リンゴだけでいいの？葡萄は？」
『じゃあそれも…』
フルーツが盛られた皿を手元に引き寄せ、Aの皿に瑞々しい葡萄を取ってやった
リンゴに気を取られていた意識が今度は手元の皿へと向かう
ちまちまと皮を剥き始めたAを横目に教師卓の方へと視線を投げると、どこかほっとした様子の先生たちと目が合った
ダンブルドアが「ようやった」と言わんばかりに視線で微笑む
Aに目を戻すと、作業に夢中になっているようで無言で指を動かしていた
わざわざ手で葡萄の皮を剥くその所作は、以前の彼からは想像できないほど稚拙だった
僕はただその背に軽く手を添えるだけ
彼に触れる口実が出来た現状に、僕は不謹慎にも胸が高鳴るのであった
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1304人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「ハリーポッター」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ぽか - 面白すぎてすぐ読んでしまいました！すごく面白いですし、主人公の病みが出てきてワクワクしてます！完結して欲しい・・・！更新無理せず頑張ってください！ (4月19日 17時) (
レス) @page34 id: 8fb0247eee (このIDを非表示/違反報告)
まど - 読んでて物凄くわくわくしました！言葉や展開の言い回しが素敵で、実際にある国などついつい調べて何時間も費やしてしまいました幸せです。是非完結していただきたい…！無理せず更新頑張ってください！ (1月9日 21時) (レス) @page34 id: 6fc7e82b20 (このIDを非表示/違反報告)
ぴの - 凄く面白くて一日で見ました！！今から2週目見てきます！！！！更新頑張ってください！！！！ (12月24日 13時) (レス) @page34 id: 49fa55860c (このIDを非表示/違反報告)
ユーリ - はぁぁ！最高です♡♡また更新してください♡待ってます！！！お体にお気をつけて！ (9月12日 21時) (レス) @page34 id: eb702a756c (このIDを非表示/違反報告)
おパブロで。 - お、面白すぎてイッキ見しちゃった……(ﾟωﾟ)お身体に気を付けて毎秒更新して下さいね！！！！ (9月12日 0時) (レス) @page34 id: e2ea27c298 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ﾆﾉｺｺ
| 作成日時：2021年12月17日 17時
