第340夜 ページ7
『いっ…』
痛い、離して
そんな文句は先程自分がやらかした手前、何一つ漏らせなかった
グイグイと引かれる腕をされるがまま、足は重く暗い地下牢へと向かっていった
「座れ」
地下の準備室に入るやいなや、厳重に閉ざされた扉を振り返る間もなく一脚の椅子に座らせられた
投げ飛ばされるに近い扱いで、バランスを失った身体が深く椅子に沈みこんでいく
生徒に対する態度ではない
けれどそれでいい
今の僕にとっては痛いくらいがちょうど良かった
「飲め」
デザイン性もクソもないただの小瓶を渡され、僕は渋々それを受け取る
蓋を開け中身を嗅ぐといつもより濃い香りが鼻腔をくすぐった
吐き気を催しそうだ
「飲め」
『……』
上から威圧する声で促される
その圧に無言で抵抗した
すると痺れを切らした先生が小瓶を奪い取って、もう片方の手で僕の顎を掴んだ
『うっ、ぐ、』
それから拒否を唱える間もなく中身を無理やり口内に流し込まれる
鼻をつままれれば嫌でも喉に流し入れるしかなかった
『うぇっ、…っ、』
いつもより不味く感じる液体
良薬口に苦し、とは極東の島国の言葉だったか。いや、その隣の大陸だったっけ
どうでもいい事を考えながら床に膝をつき、その不味さに一人嘔吐いた
『(これはただのマズイ水だな。本当に良薬ならあんなことしなかった…)』
先程の男子生徒の脈拍が手のひらにこびりついている
思い出すだけで頬が緩んでいった
とてもきもちがよかった
「……」
その笑みを見かねたのか先生が追加で瓶を取り出す
僕はその動作を跪いたまま見上げ、それからくつくつと喉で笑った
「……何がおかしい」
『………おかしいよ、アンタも、校長も、みんな』
眉を顰めた先生
僕は再度椅子に深く腰掛け直した
『合理的に考えれば、もっと簡潔で簡単な方法があるのに、皆それをしない』
分かっているクセにそれを避けている
僕の苦しみを度外視してまで優先させている、ひたむきな願い
『僕のこと、殺せばいいのに』
そうすれば全て解決。面倒な奴は冥府神のもとへ送られる
なのに皆して殺す決断から逃げている
『勝手だよ、あんたら』
ゾッとするほどの仏頂面が僅かに揺れる
それを見て僕は小さく笑った
『でも、ありがとう』
意味を測りかねた目が細められた
冷たく見えるその仮面にも、きっと深い何かが隠れている
僕を殺せないのも同じ理由
だから僕は小さく感謝を述べた
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ぽか - 面白すぎてすぐ読んでしまいました！すごく面白いですし、主人公の病みが出てきてワクワクしてます！完結して欲しい・・・！更新無理せず頑張ってください！ (4月19日 17時) (
レス) @page34 id: 8fb0247eee (このIDを非表示/違反報告)
まど - 読んでて物凄くわくわくしました！言葉や展開の言い回しが素敵で、実際にある国などついつい調べて何時間も費やしてしまいました幸せです。是非完結していただきたい…！無理せず更新頑張ってください！ (1月9日 21時) (レス) @page34 id: 6fc7e82b20 (このIDを非表示/違反報告)
ぴの - 凄く面白くて一日で見ました！！今から2週目見てきます！！！！更新頑張ってください！！！！ (12月24日 13時) (レス) @page34 id: 49fa55860c (このIDを非表示/違反報告)
ユーリ - はぁぁ！最高です♡♡また更新してください♡待ってます！！！お体にお気をつけて！ (9月12日 21時) (レス) @page34 id: eb702a756c (このIDを非表示/違反報告)
おパブロで。 - お、面白すぎてイッキ見しちゃった……(ﾟωﾟ)お身体に気を付けて毎秒更新して下さいね！！！！ (9月12日 0時) (レス) @page34 id: e2ea27c298 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ﾆﾉｺｺ
| 作成日時：2021年12月17日 17時
