第338夜 ページ5
それぞれ悶絶する男達を眺めながら、僕は昏い波の音に耳を澄ませていた
＿＿＿＿殺れ、殺してしまうのだ
『……うるさい』
＿＿＿＿立派な正当防衛だ。殺してしまってなんの罪がある。自分に仇なす者は諸共殺してやるのがいい
『うるさい…』
語りかけられる度にズブズブと足下から泥沼に浸かっていく感覚
段々泥に落ちて行くのが心地好くなってきていた
＿＿＿人を手にかけるのは気持ちがいいぞA
『……あぁ、そうだ。きっとそうに違いない…』
瞬きの間に思考は堕ちていた
無自覚だった
呟いて、僕はゆらゆらと床に転がる男共に近寄る
『だってまだものたりない。こんなんじゃたりないんだ』
一人の男に馬乗りになる
それから興奮に震える手を伸ばし、男の首にあてがった
「お、おいやめろ…やめろっ！」
『きみたちがわるいんだからね……さきにてをだしたきみたちが』
バタバタと暴れる男を上から抑える
首に当てた手から男の脈拍が伝わってきて心臓が高鳴った
『(やっと、やっと人を＿＿＿)』
ずっと抑えられていた衝動が全身を駆け巡る
隠しきれない高揚感が口元に滲む
ぐっと男の首に回した手に力を込めた
その時
「っ、A…」
それは微かな声だった
泣きそうな、怯えた小さな叫び
僕はゆるゆると顔を上げる
「A……っ」
ドラコが泣いていた
いつもの強気で生意気な瞳には水が張り、眉間に刻まれた皺はとても深い
「だ、めだ…そんなこと…」
『…でも、』
止めようとしてくるドラコに、物足りないんだとそう返そうとした
けれど
「ふ、ふふんっ」
鼻につく笑い声が聞こえた
ドラコに向けた視線を、更にずっと先の廊下の方に向ける
『…あぁ、そういうこと』
奥の廊下にはアンブリッジが胸を反らして立っていた
それだけで僕はこの一連の流れが仕組まれたものだと悟る
『アンブリッジに言われてこんなことをしたんだね、ドラコ』
そう言うと彼はビクリと肩を揺らした
だけど僕はそれだけじゃないと目を細める
ドラコの怯え様と男達の強気な行動。それから調子を取り戻したアンブリッジ
『…もしかして父様から何か言われたのかな』
恐らくアンブリッジを通して父様から指示が下ったのだろう
だったらドラコが逆らえないのも当然だ
けれど一連の元凶を突き止めたものの、中途半端に波に侵された僕は手の力を緩められなかった
理性の欠片が警鐘を鳴らす
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1304人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「ハリーポッター」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ぽか - 面白すぎてすぐ読んでしまいました！すごく面白いですし、主人公の病みが出てきてワクワクしてます！完結して欲しい・・・！更新無理せず頑張ってください！ (4月19日 17時) (
レス) @page34 id: 8fb0247eee (このIDを非表示/違反報告)
まど - 読んでて物凄くわくわくしました！言葉や展開の言い回しが素敵で、実際にある国などついつい調べて何時間も費やしてしまいました幸せです。是非完結していただきたい…！無理せず更新頑張ってください！ (1月9日 21時) (レス) @page34 id: 6fc7e82b20 (このIDを非表示/違反報告)
ぴの - 凄く面白くて一日で見ました！！今から2週目見てきます！！！！更新頑張ってください！！！！ (12月24日 13時) (レス) @page34 id: 49fa55860c (このIDを非表示/違反報告)
ユーリ - はぁぁ！最高です♡♡また更新してください♡待ってます！！！お体にお気をつけて！ (9月12日 21時) (レス) @page34 id: eb702a756c (このIDを非表示/違反報告)
おパブロで。 - お、面白すぎてイッキ見しちゃった……(ﾟωﾟ)お身体に気を付けて毎秒更新して下さいね！！！！ (9月12日 0時) (レス) @page34 id: e2ea27c298 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ﾆﾉｺｺ
| 作成日時：2021年12月17日 17時
