第360夜 ページ27
「醜い跡だと思っただけだ」
ブラックが重々しい口調で告げた後、浴室には奇妙な沈黙が落ちた
僕はいつもより覇気のないブラックに戸惑い、ブラックはブラックでそれ以上言葉を重ねることは無く、ルーピン先生は二人を交互に見て困ったように笑った
「ここは寒いし、ダイニングへ行こうか」
君の髪も乾かさないとね、と言う先生の言葉を僕は『いい、部屋に戻る』と一蹴し、浴室の扉に手をかける
僕は小さく息を吐く
ルーピン先生はどういうつもりなのだろうか
家主の前でそんなこと言おうものなら、また口論に発展してしまうじゃないか
とにかくここの家主は僕を毛嫌いしている
今もほら、目を吊り上げて罵詈雑言を並べるために口を開こうとして…＿＿＿＿
だが、様子を伺おうと振り返った僕の目に飛び込んできたのは想像していたものとは大きく違った
「……」
『……？』
ブラックは無言だった
眼光は鋭かったが、けれどいつものように何か文句を零すでもなく、ただ僕を睨めつけるように見ていただけだった
『(えぇなになになに、怖いんだけど…)』
いつもと違う反応にいっそ薄ら寒さすら感じる
それくらい、目が合ってもブラックから何も言われないというのは僕にとって違和感が大きかった
「さあ、突っ立ってないで行こう」
口を開いて呆然とする僕の肩を後ろからルーピン先生が押して廊下に促す
ブラックに向けていた奇妙なものを見るような視線が先生の体に遮られた。必然的にアイツの顔も見えなくなる
「行こう。体が冷えてる」
僕は小さく頷いて先生に促されるままダイニングへ足を進めた
部屋に着く頃にはいつの間にかブラックはどこかへ行ってしまっていた
.
.
.
.
ダイニングはささやかながらクリスマスの飾りが施され、暖炉の薪がぱちぱちと爆ぜる音が遠くに聞こえた
パーティはとうに終わっていたらしく、モリーおばさんの指示で子供達が片付けのために右往左往していた
僕が部屋に入るや否や部屋中の頭がこちらに向けられる
皆分かりやすくびっくりしていた
「A！来てくれたのね！あぁでもどうしましょう、料理はもう片付けてしまって」
『ありがとうおばさん。でもただ立ち寄っただけだから』
気にするなと首を振ると、おばさんは「さあさ座って」と僕の腕を引いて椅子の一つに座らせた
浅く腰掛けると椅子がギシと小さく音を立てる
4階とは違い、ここは指先がジンとする程暖かった
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1304人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「ハリーポッター」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ぽか - 面白すぎてすぐ読んでしまいました！すごく面白いですし、主人公の病みが出てきてワクワクしてます！完結して欲しい・・・！更新無理せず頑張ってください！ (4月19日 17時) (
レス) @page34 id: 8fb0247eee (このIDを非表示/違反報告)
まど - 読んでて物凄くわくわくしました！言葉や展開の言い回しが素敵で、実際にある国などついつい調べて何時間も費やしてしまいました幸せです。是非完結していただきたい…！無理せず更新頑張ってください！ (1月9日 21時) (レス) @page34 id: 6fc7e82b20 (このIDを非表示/違反報告)
ぴの - 凄く面白くて一日で見ました！！今から2週目見てきます！！！！更新頑張ってください！！！！ (12月24日 13時) (レス) @page34 id: 49fa55860c (このIDを非表示/違反報告)
ユーリ - はぁぁ！最高です♡♡また更新してください♡待ってます！！！お体にお気をつけて！ (9月12日 21時) (レス) @page34 id: eb702a756c (このIDを非表示/違反報告)
おパブロで。 - お、面白すぎてイッキ見しちゃった……(ﾟωﾟ)お身体に気を付けて毎秒更新して下さいね！！！！ (9月12日 0時) (レス) @page34 id: e2ea27c298 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ﾆﾉｺｺ
| 作成日時：2021年12月17日 17時
