第356夜 ページ23
ここに来てからどれくらいの時間が経っただろうか
窓も時計もない部屋のど真ん中で、何をするでもなくただ突っ立っている僕は傍から見たらただの不審者だろう
セドリックを追い出してからというもの、何もする気が起きなくて、動くことすら億劫になって棒立ちになっていた
階下からは子供たちの笑い声や、時折大人たち(主にモリーおばさん)の怒号が聞こえてきて何とも賑やかだ
『(そういえば今日はクリスマスだったな…)』
普段から三人寄れば瞬く間に騒々しいメンツではあったが、今日はクリスマスということもあり、いつも以上にはしゃいでいるのが聞こえてくる声だけで分かった
『……』
なんだか寒いな
そう思うと同時に、それまで微動だにしなかった足が知らず知らずのうちに扉へと向かって動き出した
『シャワー借りるか…』
どこが寒いのか、何が冷たいのか
何も分かっていない様子で、Aはぼんやりとした様子のまま部屋の外へと踏み出して行った
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1階までは誰とも鉢合わせることなく降りることが出来た
今は夕食の時間だったらしく、ダイニングへと続く扉の向こうからは騎士団の皆の賑やかな声が聞こえてくる
その扉を素通りすると、僕は人気のないシャワールームへとスタスタと足音も気にせず向かった
『相変わらずせっっまいな〜』
この邸宅唯一の浴室に足を踏み入れながら、誰に言うでもなくそんな失礼な感想を呟いた
長らく手入れされず錆び付いた鏡に『うちとは大違いだ』と言ってシャツを脱いだ
パサ、と静かに音を立てて布が一枚一枚床に脱ぎ捨てられていく
何一つ身にまとっていない生まれたままの姿では、冬の冷気は一層冷たく感じた
洗面台を横切り、シャワールームの透明な扉を押して開ける
人が1人立てるだけのスペースしかないそこに入り込むと、扉を閉めてキュッと蛇口を捻った
上から降り注いでくるぬるま湯を頭から被ると寒さが少しだけ和らいだ
『いたっ…』
少し身動ぎしただけで肘が壁にぶつかってしまうのはいただけないが、やはり体を清めるのは気持ちがよかった
ちなみに先程から狭い狭いと文句を言っているが、ブラック家の浴室の広さはイギリスでは一般的、むしろ広い方に位置する
そんなことなど露知らず、世間知らずの坊ちゃんよろしくAは実家のヘルエレガル邸の浴室と比べてはブツブツ一人で小言を漏らすのであった
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ぽか - 面白すぎてすぐ読んでしまいました！すごく面白いですし、主人公の病みが出てきてワクワクしてます！完結して欲しい・・・！更新無理せず頑張ってください！ (4月19日 17時) (
レス) @page34 id: 8fb0247eee (このIDを非表示/違反報告)
まど - 読んでて物凄くわくわくしました！言葉や展開の言い回しが素敵で、実際にある国などついつい調べて何時間も費やしてしまいました幸せです。是非完結していただきたい…！無理せず更新頑張ってください！ (1月9日 21時) (レス) @page34 id: 6fc7e82b20 (このIDを非表示/違反報告)
ぴの - 凄く面白くて一日で見ました！！今から2週目見てきます！！！！更新頑張ってください！！！！ (12月24日 13時) (レス) @page34 id: 49fa55860c (このIDを非表示/違反報告)
ユーリ - はぁぁ！最高です♡♡また更新してください♡待ってます！！！お体にお気をつけて！ (9月12日 21時) (レス) @page34 id: eb702a756c (このIDを非表示/違反報告)
おパブロで。 - お、面白すぎてイッキ見しちゃった……(ﾟωﾟ)お身体に気を付けて毎秒更新して下さいね！！！！ (9月12日 0時) (レス) @page34 id: e2ea27c298 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ﾆﾉｺｺ
| 作成日時：2021年12月17日 17時
