第354夜 ページ21
気鬱なクリスマスはすぐにやってきた
憎悪をぶつけてくる家主の家に滞在なんて誰だって気が塞がるだろう
けれど憂鬱に感じているのは(当り前だが)僕だけらしく、帰り支度をする他の子どもたちの様子はどこか浮足立っていた
クリスマスと帰省。二大イベントに直面した生徒たちの静かな興奮は、少しずつ僕を蝕んでいった
…愉しそうな彼らの姿を目にするたび、元からなかった元気が徐々に削がれる気がした
「準備できた？」
『ん…』
帰省当日
今やもう僕のお目付け役と化したセドリックに誘導され、僕らは隣並んでホグズミードの駅に向かった
僕らと言っても、汽車に向かう一行の中にウィーズリー兄弟やハリーの姿はない
疑問に思ってセドリックに問うと、どうやらウィーズリーおじさんが大怪我をした関係で皆は一足先にホグワーツを発ったらしい
『へぇ…』と気のない声を返す
おじさんが怪我をしたことはそこで初めて知ったのだが、自分でもびっくりするくらい反応は薄かった
…残念なことに、心が痛むなんてことはなかった
もう、限界が近いのかもしれない
久しぶりに訪れた騎士団本部は相変わらずの薄暗さだった
手の行き届いてない清掃。微かに舞った埃が鼻を擽り、微細なそれが喉に張り付いた気がした
『…こほッ』
わざとらしく咳を零す
「はっ、来やがったか。…このクソJr.め」
すると、僕の予想した通り奥の方からこちらを強く睨みつけた男が悪態をつきながらやってきた
シリウス・ブラック。この家の主だ
『こんにちは、引きこもり。来てやったよ』
軽く言い返すと、沸点の低いブラックはグルル…と唸りそうな勢いでさらにこちらを激しく睨みつけてくる
その懐かしさすら感じそうな険悪な空気に、僕はあろうことか快感を覚えていた
学校では懸命に抑えつけようとしていたザラザラとした激情だが、この男になら多少吐き出してもいいだろうという、一種の気の緩み
自分を嫌っているこの男になら荒れた感情をぶつけてもいい。なぜならブラックは僕の言葉で傷つくような奴ではないのだから
「来てやっただと？慈悲で住まわせてやっているのに随分な言い様だな」
『はは、ホグワーツの方がマシに決まっているだろう。周りに言われて仕方なく、だよ。勘違いしないでくれるかな』
「…黙れ、この穀潰しめ」
『失せろ、こどおじ』
玄関先で白熱する口論
それを止めたのは、マッドアイの「いい加減にしろ小童ども」という呆れた声だった
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ぽか - 面白すぎてすぐ読んでしまいました！すごく面白いですし、主人公の病みが出てきてワクワクしてます！完結して欲しい・・・！更新無理せず頑張ってください！ (4月19日 17時) (
レス) @page34 id: 8fb0247eee (このIDを非表示/違反報告)
まど - 読んでて物凄くわくわくしました！言葉や展開の言い回しが素敵で、実際にある国などついつい調べて何時間も費やしてしまいました幸せです。是非完結していただきたい…！無理せず更新頑張ってください！ (1月9日 21時) (レス) @page34 id: 6fc7e82b20 (このIDを非表示/違反報告)
ぴの - 凄く面白くて一日で見ました！！今から2週目見てきます！！！！更新頑張ってください！！！！ (12月24日 13時) (レス) @page34 id: 49fa55860c (このIDを非表示/違反報告)
ユーリ - はぁぁ！最高です♡♡また更新してください♡待ってます！！！お体にお気をつけて！ (9月12日 21時) (レス) @page34 id: eb702a756c (このIDを非表示/違反報告)
おパブロで。 - お、面白すぎてイッキ見しちゃった……(ﾟωﾟ)お身体に気を付けて毎秒更新して下さいね！！！！ (9月12日 0時) (レス) @page34 id: e2ea27c298 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ﾆﾉｺｺ
| 作成日時：2021年12月17日 17時
