第344夜 ページ11
「あの人に大人気ないことするのはやめてって伝えようかしら」
積もる雪を無感情に眺めていると、ふとジニーがそんなことを言い出した
僕はふ、と笑って首を振る
『いいよ別に。大したことじゃないし』
万人に好かれるのは不可能
好意を寄せられることがあるなら、憎悪をぶつけられることだってそう珍しいことじゃない
まぁあの人の場合、多少の理不尽は感じなくもないけど
『あの人が僕にどう接しようが興味無いんだよ』
そう、吐き捨てるに近い声音で呟いた
静かに、少しずつ冷たい雪は積もっていく
指先まで凍るこの寒さじゃ、積もった雪はそう簡単に溶けそうもない
「…ほんとに興味ないの？」
『ない』
風が吹いて一瞬雪が舞うように空中で乱れた
「でもそれにしては、あなた…」
言いにくそうに後ろで彼女が言葉を紡ぐ
「…なんだかとても寂しそうに見える」
二人だけの空間に沈黙が落ちた
僕は彼女が言った言葉の意味を頭の中でゆっくりと咀嚼する
『(寂しい、さみしい、か)』
そう、なのだろうか
自覚がないだけで、傍から見たら僕は寂しいそうな顔をしているのかもしれない
『(…あぁ、でも)』
寂しいとはいっても、その感情はシリウス・ブラックに嫌われていることへの悲観ではない
『あの人…シリウス・ブラックを見ているとギリシャに帰りたくなる』
「え……ギリシャ？」
ふと零れた嘆きにジニーが訝しげに首を捻った
僕は振り返らず、雪に視線を留めたまま続ける
『……郷愁の念と言うのかな
彼が父親らしく振る舞う度、僕は無知で馬鹿で、でもこの上なく幸せだった幼少期に戻りたくなる』
ギリシャに生まれ、ギリシャで幼少期を過ごした
神の杖と出逢うよりも前。記憶も朧気にしか残っていない位小さい頃のこと
それでも心は覚えている
『思惑も策略もない。父様も母様もただただ真っ直ぐに僕を思ってくれていたんだ』
昔はただの子供だった
なのに、いつからあの人への献上品になってしまったんだろう
『だから戻りたくなる。ただの子供でいられたあの頃の自分に。まっさらな愛を育んだ故郷に』
気付けば雪はいつの間にか止んでいた
『ハリーが羨ましい。もちろん君たち兄妹のことも』
どんなに背が伸びても、魔法を覚えて強くなっても
親の前ではただの子供でいたかった
目の前の雪景色が白く滲む
『父様、母様…』
遠い過去の残像に呼びかける
返事はなく、呼び声は雪の中へと溶けていった
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ぽか - 面白すぎてすぐ読んでしまいました！すごく面白いですし、主人公の病みが出てきてワクワクしてます！完結して欲しい・・・！更新無理せず頑張ってください！ (4月19日 17時) (
レス) @page34 id: 8fb0247eee (このIDを非表示/違反報告)
まど - 読んでて物凄くわくわくしました！言葉や展開の言い回しが素敵で、実際にある国などついつい調べて何時間も費やしてしまいました幸せです。是非完結していただきたい…！無理せず更新頑張ってください！ (1月9日 21時) (レス) @page34 id: 6fc7e82b20 (このIDを非表示/違反報告)
ぴの - 凄く面白くて一日で見ました！！今から2週目見てきます！！！！更新頑張ってください！！！！ (12月24日 13時) (レス) @page34 id: 49fa55860c (このIDを非表示/違反報告)
ユーリ - はぁぁ！最高です♡♡また更新してください♡待ってます！！！お体にお気をつけて！ (9月12日 21時) (レス) @page34 id: eb702a756c (このIDを非表示/違反報告)
おパブロで。 - お、面白すぎてイッキ見しちゃった……(ﾟωﾟ)お身体に気を付けて毎秒更新して下さいね！！！！ (9月12日 0時) (レス) @page34 id: e2ea27c298 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ﾆﾉｺｺ
| 作成日時：2021年12月17日 17時
