【明治東京恋伽】満月の夜森邸組 (ページ4)

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「綺麗だなあ…」

引き出しを開けた私は感嘆の声を漏らしていた。
そこには化粧品が敷き詰められている。

流石森家、と言ったところだろうか、その全てが高価そうだ。
明治時代なので当たり前と言えば当たり前だが、レトロで可愛らしく、いかにも年頃の少女が持ってそうなものたちばかりだ。
ある化粧品のケースにはステンドグラスのようなあしらいがされてて、また別のものには椿が描かれている。

その中でも一番高価そうな、重厚な箱に手を伸ばす。埋め込まれている青い石はサファイアだろうか。
私は、恐る恐るその箱を開ける。何か間違えて壊してしまわないように。

キィッ、

箱が開いた。
どうやらアクセサリーボックスのようだ。中には指輪や簪、ネックレスが入っている。
どれも青や赤、白など女性らしい色のものたちだ。

しかし。
その中にひとつだけ、他とは違う、異質なものがある。

指輪だ。
元の色は多分、金。宝石は紫だったのだろうか。
金属は完全に錆びてしまっていて、宝石はくすんだような、淀んだような色になっている。

日が傾いている。
朧の時だ。

「…い、たい…」

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評価ありがとうございます。私の生きる糧です。