背中───From F ページ10
.
これは、太輔がキスブサで
最下位チョーブサイクをとった夜の話。
「おい、何見てんだよ」
クククッと喉元を鳴らすように笑いつつ
お風呂上がりの太輔が
バスタオルで頭をガシガシ拭きながら
リビングに入ってきた。
「太輔、チョーブサイク!」
おちょくるように笑いながらそう言うと、
“見んなよ”と少し恥ずかしそうに視線をずらす。
「太輔がここまでけちょんけちょんに
言われてるの久しぶりに見たかも」
「でしょうよ…
俺だってこんなん不本意だわ」
「ふふふっ…キモいだって」
収録の時を思い出したのか
太輔は眉間に皺を寄せて目を瞑り、
口元を噤むように強張らせている。
今にも唸り出しそうな表情をしているから、
“眉間に皺寄ってますよ〜”って言いながら、
そこを指先でスリスリと撫でる。
その瞬間、撫でていた手を取られ
ゆっくりと開かれた太輔の瞳に捕まる。
「慰めてよ」
いつもより少し低く、
甘い声色を纏った太輔の声が
耳から脳に伝わると同時に
フワッと抱き締められた。
タオルドライしただけで
まだ濡れたままの髪の毛が頰に触れて
少し冷たい。
「珍しいね、太輔がそんなこと言うの…」
ゆっくりと背中に手を回して
猫背のせいか、
少し丸い彼の背中をあやす様に優しく撫でるけど、
その体は微かに強張っている。
.
90人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「北山宏光」関連の作品
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:みこ | 作成日時:2019年4月3日 23時