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『あなたが手を汚す必要はない。』
ゆっくり麻木に近づくと、彼の黒い瞳は私を捉えて少し怯む。
ナイフを握る、ハリのない中年の手に自分の手を重ね
その細い金属を自分の手中に収めた。
『もっと早く、こうするべきだった。』
不思議と恐怖心のようなものはなかった。
さっき、麻木に捲し立てられていた時の方がよっぽど怖くて
目の前の男と目を合わせたまま、鋭い刃を首元に充てる。
何年もの間掃除もされずにくすんだ窓の外では、雨が降り始めていた。
麻「ひとつだけ聞いてもいいかな」
目の前で人が死のうとしているんだ、
麻木の目は若干の怯えを孕んで私を見つめる。
『どうぞ。』
麻「あの、元ホストの彼と過ごしていて、幸せだったか？」
そのたった一言に、喉元が潰れるような感覚が襲ってきて
苦しい。
視界がぐるりと回転しそうになって咄嗟に目を瞑ると、
意思に反して浮かぶ温かい人たちの姿。
私には、
こんなにも汚くて歪んだ私には、
痛いほどの優しさをくれた人たちがいた。
『幸せ、だった...』
龍也、
苦しい思いをさせてしまうかな。
自分が息をしているのかもわからないまま、
涙が出そうな感覚だけを認識して
首元に当たっている冷たいそれを丁寧に握り直す。
『ごめんなs...』
力を入れるのと完全に同時だった。
開いた入り口に一瞬見えた凸凹な二人。
地面に頬がついた時、
色を失くした大好きな人の瞳が
私の汚れた瞳に映った。
→
続く (更新停止中)
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きらり(プロフ) - 柊ノアさん» お返事遅くなり申し訳ありません。コメントありがとうございます。書き手の方に褒めていただけるのはとても恐縮ですが嬉しいです。更新ペースが遅過ぎますが、完結までぜひお付き合いください。 (2018年5月15日 1時) (
レス) id: b9712d1521 (このIDを非表示/違反報告)
柊ノア(プロフ) - はじめまして。柊ノアです。とても面白いです。私は京本担ですが七五三掛君も好きなので… (2018年3月25日 11時) (レス) id: fcacf34529 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：きらり | 作成日時：2018年2月20日 19時
