ビターな林檎＊Ryuya.S. (ページ40)

今日:6 hit、昨日:0 hit、合計:46,611 hit

∴40 ページ40

∴40

龍｢身体辛くなかったら付き合って欲しいとこあるんだけどいい？｣

二つ返事で車に乗り込んだ。

人の車の助手席に乗ることなんて殆どなくて、
横目で龍也を見てはドキドキする。

馬鹿みたいに、恋してるんだ、わたし。

『綺麗……』

静かなドライブを経て着いたのは、

海に日が沈んでいく景色。

ありがちな風景だけど、
こんなに近くで見たのは初めてだった。

小さい頃から家族で出かけた経験なんてなくて
中学からは夜中しか出歩いてなかったから。

龍｢いいでしょ、ここ。｣

眩しいくらいのオレンジ色に照らされた龍也の顔から目が離せなくなって

まじまじと見つめてしまう。

龍｢何？なんか付いてる？｣

『あ、ううん何でもない』

龍｢Aも綺麗なもの見るとそんな顔すんだね｣

発言の意図が読めなくて困惑する私をよそに、
龍也はそばの段差に腰掛けた。

私も隣に座る。

龍｢俺の付き合ってた相手、死んだって言ったじゃん
あのことなんだけどさ｣

儚げな表情が、さらに切なさを帯びる。

『私が昔の話したからって、
言いたくないこと言わなくてもいいよ？』

こんなこと言って、
聞くのが怖いのは私の方なのに。

龍｢Aに聞いてほしい。
俺の独り言だと思って聞いてて。｣

『…わかった。』

少しずつ、

大切に言葉を紡ぐように話し始める龍也は

今にも沈む日と共に
夕方の海に溶けてしまいそうだった。

→