ビターな林檎＊Ryuya.S. (ページ26)

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すげぇ好きだった

そう言った龍也の顔は、
私が見たことない顔だった。

優しくて、儚くて、切ない顔。

龍也にこんな表情をさせる女の人って
どんな人なんだろう。

きっと可愛くて、愛らしくて
放っておけないような人なんだろうな。

私みたいな汚れて曲がった女じゃなくて。

『まだ好きなの？その人のこと』

知りたくない、聞きたくないのに

自分の気持ちにすら逆らって出てくる言葉。

つくづく自分の首を絞めるのが好きだなぁ私、
なんて思う。

龍｢もういないから、

…死んだんだ｣

『あ、………ごめん。』

龍｢謝ることないって
事実は事実だしさ。｣

この期に及んで、
相手が亡くなってる人なら勝ち目ないじゃん

とか思ってる私はありえないくらい最低だ。

大好きで、愛している相手が

愛しているまま死んじゃったら

一生大好きなまま心に残る。

そんなの私が一番よく知ってるはず。

私の場合は、お母さんだけど。

龍｢ごめん、今の話忘れて｣

『いや私こそ余計なこと聞いてごめんね』

龍｢まぁ人間色々あるよ｣

『そう、だよね』

龍｢俺なんかよりAの方がよっぽど色々ありそうだけどな(笑)｣

そりゃ、
会って数日の相手とここまで深く関わっちゃう女だから
そう思われて当然。

『まぁ、ね(笑)』

龍｢言いたくなったら、聞くよ俺は。

言いたくならないだろうけど｣

不快な詮索は一切しないのに

拠り所をくれる

やっぱり龍也は不思議な人で、
私は龍也が好きなんだ。

龍｢気をつけて帰れよ｣

『また来るね』

龍｢おう。｣

いつでも来れるのに、この部屋を出る時が
今生きてて一番寂しく感じる。

こんなにいろんな感情を持つようになったのも
龍也と出会ったおかげな気がする。

学校を辞めたばかりの私は本当に屍みたいだったから。

心做しか足取りも軽く、いつもの公園の前を通りかかった。

｢Aちゃーん、昨日はどうも
俺の相手はしてくれんかったのに、先輩のとこ行ってたんやなぁ。しかも朝帰りで、昼帰りか(笑)｣

『……永瀬、』

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