月の姫4

忘れろ ページ35

ル「あ……あぁ」

割れてしまったそれを急いで拾おうとする


しかし…

ル「あ……」


どういうわけか割れた首飾りはすぅっと消えてしまった


シ「ルーナ……」

ル「…シュ…テン、なんで……？」



どうして…、なんでこんなひどいことを……、



ル「宝物、だったのに……！」

じわり、と涙がにじむ

私の涙をみるとシュテンは慌てて言った

シ「っおい、泣くなって！本当に壊れたわけじゃねぇから！」

ル「……そうなの？」


シ「言っただろ？お前の夢ん中だって」


ル「……そういうものなの？」


シ「そういうもんだ！」




ル「……じゃあ、なんで割ったの」

恨みがましくシュテンを睨むと若干あわててシュテンが言う


シ「別に悪気があったとか嫌がらせとかじゃねぇからな！」


シ「ただ…」


真っ直ぐこちらを向いた目には強い光が灯っていた


シ「ただ俺はお前を救ってやりたいだけなんだ、お前に気づいてもらいたいだけなんだ」

ル「気づく…？」


シ「なぁルーナ、お前が今一緒に生きているのは誰だ？共に時間を共有しているのは誰だ？お前が守りたいって思うのは誰だ？」

ル「それは……」


頭にパッとゼノやヨナ、ユンたちの顔が浮かぶ


シ「もう昔とは違う、もうお前の隣にいるのは俺じゃねえんだよ…だからあれはもう必要ねぇ、だから割った」


ル「…………」


シ「俺(過去)に縛られるな、昔のことなんて忘れちまえ、俺のことだって忘れてもいい」


シ「現在(いま)を生きろ」



ル「でも……どうしたら……」

口ごもる私にシュテンが続ける


シ「今すぐじゃなくていい、ゆっくり自分の生き方を見つけていけばそれでいい」


シ「何度失敗してもいい、何度壊れてもいい、何度だってやり直せるんだからな」


シ「……どうせ死ねないのなら、楽に構えて生きろ、お前にとっちゃどっちでも変わらないんだしよ」



ル「でも、でも……みんなが私のせいで不幸になったら、みんな、私のことなんて求めてないんじゃ……」


シ「だからどうした？問題はそこじゃない、大事なのはお前の気持ちだ、あとの事はそれからでいい」




シ「だからルーナ、もう過去なんかに囚われるな、お前らしく生きて欲しい」



シ「俺の願いはただ、それだけだ」









シュテンの声が、言葉が

どこかですとん、と私の中に響いた音がした気がした

希望の言葉→←あなたのおかげで

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