24 ページ24
.
『賢ちゃんに大事なお話があります』
『だからお願い、返事をください』
『もしかしたら私の最後のお願いかもしれない』
電気一つ付いていない真っ暗な部屋に携帯の画面がポン、と明るく光ったかと思えば表示されたメッセージに思わず釘付けになる。
瀬見さんの着信は全て無視、メッセージは見たけれど既読を付けただけで返事なんてしなかった。
でも、なんだ。Aの最後の願いって何なんだよ。返事をしようかしまいか悩む俺に数分遅れてまたメッセージが届いた。俺は目を見開かせた。
『来週に手術を受けます』
『成功率は20パーセントです』
『それでも、私は受けます』
思わずすぐにそのメッセージを開いてしまった。カタカタと手が震える。――そんなの、聞いてない。
俺は昔からAの側にいた。Aが苦しそうにしていたところ、全部全部近くで見ていた。
初めての手術の時、不安そうに目に涙を溜めて怖いよ、って震える彼女の手を俺は握りしめることしか出来なかった。
薬の副作用が彼女の体を酷く傷付けた時もあり、何度も吐いては苦しそうに顔を歪ませて、いつになったら幸せになれるのか、と何度も涙を流して。
変わってあげられるものなら変わってあげたかった。彼女はいつも苦しみに耐えていた、けれど俺には笑顔を見せてくれた。
誰よりも辛いのに誰よりも泣きたいのにどうして俺の前ではそんなに平気そうな顔をするのか。
何にも出来ない自分に腹が立った。賢ちゃんは側にいてくれるだけでいいの、そう言ってくれたけれど俺はそれ以上にこの世の誰よりも幸せにしたかった。
そんな時に俺はある噂を聞いた。
それは自分の体の一部を差し出す代わりに自分の愛しの人を救えるというもの。だから俺は検査の日に自分の片足を捧げた。結果は今までで一番だった。
でも彼女の病気を完治させるには体の一部なんかじゃ足りない、それはつまり俺の命と引き換えということ。
だから、俺は覚悟を決めた。
彼女の元を去ってでも、彼女が幸せに生きてくれるのなら俺の命なんて惜しくないと思ったんだ。
俺に彼女が出来たなんて嘘に決まってる。自分の時間が欲しい?――そんなの、全部全部嘘だ。
『賢ちゃん。明後日の午後、会いに来てくれる?』
Aが幸せなら、俺はそれでいい。
俺は、「分かった」とだけ返した。
141人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「ハイキュー」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
カナエ・リフレッシュ(プロフ) - *夢華*さん» はい!無理の無い程度に頑張って下さいませ!楽しみにしてます!あ、久々ですけど名前略してくれて構いませんよ(笑)それでは応援しております! (2016年12月18日 10時) (レス) id: 28bf1d85d0 (このIDを非表示/違反報告)
*夢華*(プロフ) - らるこさん» らるちゃんコメントありがとう(*^^*) 私の尊敬してやまないあなたにそう言ってもらえるとすごく嬉しいです(*ノ∀ノ) ワクワクドキドキをお届けできるような作品になるように精一杯頑張ります! (2016年12月18日 10時) (レス) id: ff4f19ad35 (このIDを非表示/違反報告)
*夢華*(プロフ) - カナエ・リフレッシュさん» カナエ・リフレッシュさんいつもコメントありがとうございます!読者さんをあっと驚かせるような展開にしたいと思っているので、あれこれと予想しながら読んで頂けると嬉しいです(*^^*) これからも更新頑張りますね! (2016年12月18日 10時) (レス) id: ff4f19ad35 (このIDを非表示/違反報告)
*夢華*(プロフ) - 白猫姫さん» お久しぶりー!コメントありがとう、めちゃくちゃ嬉しいです(*^^*) 白布と瀬見さん初めての試みで緊張してるけど自分なりのペースで更新頑張るね!(ノ)´∀`(ヾ) (2016年12月18日 10時) (レス) id: ff4f19ad35 (このIDを非表示/違反報告)
*夢華*(プロフ) - フェイロさん» フェイロさん、コメントありがとうございます!精一杯更新頑張りますね!^ ^ (2016年12月18日 10時) (レス) id: ff4f19ad35 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ