別れはきっと辛いけど【白布賢二郎】

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「賢二郎にそんな幼馴染がいたなんてねぇ」



ズズズ、と勢いよくオレンジジュースをストローで吸い上げる天童。一方の俺はエスプレッソ。

ストローの袋を小さく折りたたむとそこに少しだけ水滴を垂らして、見て英太くん、芋虫〜なんて言う彼に俺は頭を抱えた。相談相手を間違えた、と。



「もしかしたらアレかもしれないネ〜」

「アレ……？」

「そう、アレ。巷で噂のアレ」


いつの間にかオレンジジュースを追加していた天童は新しくもらったストローで芋虫を作り出した。

アレ、ってなんだ。と首をかしげる俺にまたアレだよアレ〜〜なんて言ってくる。



「賢二郎の怪我とその子の検査」

「……うん？」

「最近巷でね、自分の身を犠牲にして愛する人を助けることができる紙があるって噂なんだよん」


例えば誰かが事故で足を無くしたとしました、そしたらそれを助けたいと思った誰かが紙に「自分の○○を捧げるので○○の足を返してください」って書けばあら不思議！無くしたはずの足が元通り！

と大きな目をこれでも見開かせて言う。……そんな魔法、というか漫画みたいな話が本当にあるのか？



「まぁでもやる人がいないんだけどね。自分の身を犠牲にしてまで他人のことを助けたいなんていうほどの関係、このご時世にはいないんだよ〜ん」


だからこれはあくまで俺の予想であって、あんまり信頼しないでね、とズズズと吸いながら言う。

確かにどれだけ仲のいい友人がいたとしても自分の体の一部を捧げてまで、というのはなかなか。



でも、白布が足を引きずっていたのもAちゃんが検査を受けて良い結果だったのも今日。

それにもしも本当に白布がその紙とやらを使っていたのなら元々検査の結果を分かっていたのも納得が行く。



「まさか、本当に……」

「あ、その紙もあくまで噂だからね」

「いや、ありがとう。お前さすがだわ」



次の検査は一ヶ月後。もしかして次も白布は自分の身を捧げるつもりなのか？別れって言ってたけど白布は一体何を企んでるんだよ。

まさか自分の身でAちゃんを完治させようとしてるんじゃ……。



何故だかすごく嫌な予感がした。

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