別れはきっと辛いけど【白布賢二郎】

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「だ、大丈夫ですか？私のタオル使います？」

「んーん、平気」


こんなもん黙ってりゃ乾くから、なんて言うけれど風邪でも引いたら大変だ、と少し腕を伸ばし棚からタオルを出そうとするが腕を掴まれて止められた。



「そんなことより俺と話そうよ」


雨で濡れた彼の手は当然のように冷たい、けれどどこか暖かさも感じた。

どこか私を納得させるかのような目つきに私は渋々手を布団の中に引っ込めて、「そうですね」と言った。



「ていうか今日、Aちゃんに会いたくて授業サボっちゃったよ、2コマも！」

「単位大丈夫なんですか？」

「まあ白布とは違って今回が初サボりだからな！」


なんてふざけて見せるけど本当は分かってる。瀬見さんは私が寂しい思いをしてるんじゃないかと無理してここに来てくれたことを。

じゃなきゃ普通、こんな雨の日に傘も持たずに走って来たりなんかしないでしょう。


でもどうしてここまでしてくれるの？

昨日会ったばかりなのに。




「……賢ちゃんは、」



思わず出た言葉にハッとして止める。今こうして会いに来てくれているのは瀬見さんなのに、無意識に賢ちゃんのことが気になって口走っていた。

賢ちゃんはもうきっとここには来ない、だから瀬見さんが来てくれているのに、なんて失礼なんだ。


と、自己嫌悪に陥る私に

瀬見さんはまたニッと笑った。



「白布もAちゃんに会いたがってるよ」



そう言って見せるけれど、私にはそれが嘘だっていうことがすぐに分かった。





だって、苦しそうに無理して笑うんだもの。

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