別れはきっと辛いけど【白布賢二郎】

13 ページ13

.




ぽつ、ぽつ、ぽつ。

窓の外から雨音が聞こえる。



24時間室内にいる私にとって雨が降ろうが降らまいが関係のないことだが、雨ってどうしてこんなにも気分までも曇らせてしまうのだろうか。

何にもないこの殺風景な病室に唯一降り注ぐ太陽の光と窓から見える青空。それが私の日中の唯一の楽しみなのに、今は何にも見えない。



――昔、一時的に家に戻った時があった。その日私は車椅子に乗っていて、賢ちゃんは隣にいて。

確かその時にも雨が降ったんだっけな。突然の雨に当然傘なんて持っていなくて、ただただ濡れるだけしかない私に賢ちゃんは制服のブレザーを私の頭にかけてくれた。

ありがとう賢ちゃん、って言えば、少しだけ頬を赤くさせて「ん」とだけ言って。


――もし、もしも同じような状況が彼女といる時にあったなら、賢ちゃんはブレザーを貸してあげるのかな。



そんなことを考えると心臓が締め付けられるようでガンガンと頭が痛くなって、くるしい。

嫉妬なんて見苦しい、賢ちゃんを何年も縛り付けたくせに、何を考えているんだろう。



もう、解放してあげなよ。

こんないつ死んでもおかしくない私なんかと。



思いとは裏腹に外の雨のように私の瞳から涙がこぼれ落ちる。ポタポタとシーツを握りしめた拳に落ちてくる。


――と、そんな時、突然病室の扉が乱暴に開いた。

驚いて、涙を拭うことも忘れて扉の方を見るとそこには息を切らせた瀬見さんがいたのだ。



「瀬見、さん……」


泣いている私に一瞬驚いたような表情をしながらもニッと笑って、ピースサインをする。



「授業、サボっちゃった」



彼の体はびしょ濡れだった。

14→←12

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す