嘘は取り消せない。【国見英】

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「ただいま」



小さく呟くように言って、家の中に入ると

バタバタと騒がしい足音がした。


そして、ガチャッという音がすると

リビングからお母さんが慌てた様子で出てきた。






「おかえり…‼ 遅かったから心配してたのよ?」

「あぁ、ごめん」


なんて感情が全くこもってない声で謝ると

座って靴を脱いだ。



あぁ…、久しぶりの我が家だと言うのに

もう二度と帰ってこれなかったかもしれないのに

もっともっと喜ぶべきなのに、



ひどく疲れて仕方がない。

まだ体力の方は完全には戻ってないのかな…。






なんてボーッとしながら靴紐を解いていたら

お母さんが私の横に座って、

大きな一枚の紙を見せてきた。






「これね、予備校…みたいな感じなんだけど」


大学受験するでしょう？

でもあなたは一年間勉強が抜けてるわけだし、

やっぱり塾とか通ったほうがいいと思うの。


と、言ってきたのだ。



ここは個別指導もしているらしく、

団体授業では絶対ついていけないだろうから

私にはぴったりだろう。家から近いし。







「うん、行くよ。…明日から」


そう言うとお母さんは驚きながらも

分かった、と頷いてくれた。









ごめんねお母さん。



早くに勉強して大学に受かるため…じゃなくて、

早くに何かに集中して、


英のことを忘れたかっただけなの。









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そんな理由で、ごめんね。

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