君は泣いていた。【岩泉一】

19 信じない ページ19

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時刻は既に５時を回っていた。

綺麗に澄み渡っていた青い空がオレンジ色へと

変わっていく。だがそれもまた美しいもので。


私の隣を歩く岩ちゃんはなんだかすごく嬉しそう。

口笛が聞こえてきそうな勢いだ。






「まさかの出会い、だったよな」

「･･･うん」


「蘭はやっぱり椿とそっくりだよ」

「･･･うん」







「運命の出会いってヤツかもな」








真っ直ぐな、汚れのない目をして岩ちゃんは言う。

私には『運命』という言葉が酷く胸に突き刺さった。


ダメだ･･･このままでは、岩ちゃんは

確実に蘭さんのことを好きになってしまう。





私は意を決し、

拳をギュッと握りしめて岩ちゃんに言い放った。







「蘭さんはッ･･･椿とは違う!!」





「あの人は最低な人だ」





「ずっと偽りの顔だけをみせて。」








「岩ちゃんは騙されてるだけなんだよッ･･･!!」






口が止まらない。

私は岩ちゃんに蘭さんのことを伝えるので必死で


岩ちゃんの気持ちを考える余裕なんて

これっぽっちもなかった。






「あ…?何言ってんだよ

　最低？偽りの顔？…騙されてる？


　意味分かんねェこと言ってんじゃねェよ!!」


「ッ岩ちゃ…」



眉間に皺を寄せて岩ちゃんは私に怒鳴った。

多分…、蘭さんに言ったことでも


岩ちゃんにとっては椿に言われてるみたいで

嫌だったんだろう。


いや、蘭さんでも岩ちゃんにとっては嫌、か。









「…ごめん、言い過ぎた。

　悪いが先に帰るわ。」


「うん、分かった…」






だんだんと遠ざかっていくあなたの大きな背中。



気付けば、私は携帯を開いて

連絡帳に入ってる『徹』の文字を探していた。

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