君は泣いていた。【岩泉一】

12 本性 ページ12

鳴り続ける電話に出ようとした時、

店の裏からだろうか、声が聞こえてきた。


いつもなら気にしないはずのそれに

何故だか胸騒ぎを感じて気になって、

いてもたってもいられなくなった。




「ごめん、徹」


後でかけ直すから。

徹の電話を無視して店の裏の方まで歩くと

その声の主は、どうやら蘭さんだった。


私は物陰に身を潜め、耳を澄ませる。

盗み聞きなんて最低だと分かってる。

だけど、なぜかすごく気になって仕方が無かった。






.







「そうそう！ようやくはじめ君に会えてさぁ」



「やっぱり男前！私の好みだわマジで！」



「もう狙っちゃおうかな〜。」





聞こえてきたのは、信じられない声と会話。

さっきまでの優しい口調とは違う、尖った声。

これが蘭さん？

これがあの、椿の双子の姉なの？

頭の混乱が整理出来ぬまま、盗み聞きを続けていたら






蘭さんから、信じられない言葉が、






.




.






「ほんっと、

　
　椿が死んでくれてよかったわ」





.




.






発せられたのだ。

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