君は泣いていた。【岩泉一】

16 泣き声 ページ16

＿＿＿＿＿＿＿prrrr prrrr…




ポケットに入っていた携帯電話が鳴った。

次は俺が投げる番なんだけど…、

まあ別にどうでもいいや。


俺は同じチームの奴に「頼んだ」と言うと

その場から離れて電話に出た。







.




「もしもし?」

『あ、徹?さっきは電話出れなくてごめんね』


掛けてきたのはAだった。

尚更電話に出ておいてよかった。


ーーというか、もしかして泣いてる？

時折鼻をすするような音がする、ような。





『 …徹はさ、私がずっと岩ちゃんの事が好きなの

　知ってたよね?』


震えた声でAはそう言ってくる。


うん…、知ってるよ。

椿と岩ちゃんが付き合うって言ったとき、

一人で悔しそうに拳を握りしめて震えて、

それでも二人を祝おうと何とか笑顔を作って。


苦しそうにしてたAのこと…全部知ってる。





『もちろん、今でも好きだよ』

「うん…」


『でも私ッ…もしかしたら嫌われるかもしれないな』


そこで耐えきれなくなったのか、

嗚咽が携帯の向こうから聞こえてきた。









『 …ごめん、また後でかけ直すね』








.






耐えきれなくなったのか、そこで電話は途切れた。

ツーツーという虚しい音が耳に響くだけで。





Aに、一体何があった…？

17 勇気を出して .→←15 ならば

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す