検索窓
今日:6 hit、昨日:0 hit、合計:238,359 hit

ページ14

勝ち誇ったように彼女が笑った時、

廊下を駆けてくる足音が聞こえてきた。


きっと、大倉くんだ。


「Aさん!どうしたん?」


足音だけで分かるなんて、

私は本当にこの人に恋をしてしまったんだ。


新里さんを押しのけるようにして、
私の目の前にしゃがみこんで、


「大丈夫?どっこもケガしてへん?」


心配そうに、
私の顔を覗き込む。


「大丈夫だよ、大した事ない」


そう答えたけど、
足の甲に激痛が走って、
思わず、顔を歪めてしまった。


ベージュのストッキングは、
少し血の色に染まっている。


「やっぱすぐ病院行こ。
俺、付き添うわ。
新里さん、悪いけど、
この箱、資料課まで運んどいてくれへん?」


大倉さんの毅然とした態度に、

その場で呆然として立ち尽くしてた新里さんの顔が、これ以上ない程に青ざめていく。


「女の子なのに、
こんな重いもの、
運べるわけないじゃん」


なんとかそう答えた新里さんの、
ネイルで飾られた指が、
小刻みに震え出した。


その指が、彼女自身の半袖の真っ白な二の腕に、食い込んでいく。


「じゃ、なんでいつもAさんに押し付けてんの?」


大倉くんの声は冷ややかで、
その目には、軽蔑の色が浮かんでる。


何も答えられない新里さんに、


「もうええわ。
後から俺が運ぶから」


冷たくそれだけ言い放つと、
私を背中におぶって、
歩き出した。


すれ違う社員がみんな、
私たちを好奇の目で見てる。

ざわざわした声は、
はっきりとは聞こえてこない。


大倉くんの背中はものすごく大きくて、
この邪悪な世界から、私を守ってくれる。

3→←1



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.9/10 (223 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
523人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

みき(プロフ) - 完全な罪。をちょうど先週読み返させて貰ったところで、更新通知があったので今日も読ませて貰いました!こういうお話もけっこう好きです(//∇//)なので、もし良かったらまたこういうお話も書いて頂けたら嬉しいです。 (2020年12月3日 1時) (レス) id: eb998853f9 (このIDを非表示/違反報告)
みき(プロフ) - 完全な罪。も好きなお話です!公開して下さり、ありがとうございます!foolさんの小説は本当にどれも好きなものばかりで、毎回楽しみです!! (2019年9月20日 21時) (レス) id: ad46af1069 (このIDを非表示/違反報告)
ひ み さ(プロフ) - こういうタイプのお話好きです(*^^*) また機会があったらお願いしたいくらいです 完全な罪も素敵でした、ありがとうございました♪ (2019年9月20日 1時) (レス) id: 6eb2ce4a4e (このIDを非表示/違反報告)
ひ み さ(プロフ) - ボディーガード、この手のタイプの人はホントに怖いと思います…面白いお話でした、ありがとうございました♪ (2019年5月19日 15時) (レス) id: 6eb2ce4a4e (このIDを非表示/違反報告)
yume.no.(プロフ) - コメントする前にどんどん新しいお話が!全部主人公の妄想だったのかー!こわい!倉安の今後が気になるお話☆十祭のエイトレンジャーのブラックヤスくんを思い出しました笑 (2019年5月17日 13時) (レス) id: 716f977705 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:fool x他1人 | 作成日時:2019年4月25日 17時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。