日曜日のあさ ページ18
「はちみつ」
急に御門がつぶやいた。
今はお昼の時間で４人で机をくっつけて食べている。
最近はいつもそうで学校をさぼったあの日から急に距離感が近くなった気がする。
同じような境遇で厄介な能力が出てきたのも同じ気を使わなくてよいとなれば必然ではあるのだけれどこの４人はとても居心地が良かった。
そのことはいいとして。
「なに、某熊みたいにはちみつでもなめたくなったの？」
と、少しからかうと
「違う。パンケーキの生地にはちみつを入れてから焼くと甘くなるらしいんだ。」
思ったより気になる話だった。
「双子のお父さんのパンケーキは甘かったんだろう？もしかしたら入ってたんじゃないかと思って・・・」
お父さんがいなくなってから空と何回も作ったパンケーキ。
砂糖を入れてみたり牛乳を多くしてみたりといろいろやってみたけれどあの甘さは出なかった。
はちみつかぁ・・・・
空も意外そうな顔で話を聞いている。
「じゃあ、皆で作ってみようよ。」
きっと空と二人だったら寂しくなってしまう。
きっかけは母がパンケーキを焼いてるのを目にした事だった。
パンケーキミックスに、卵、牛乳を加えてさっくり混ぜていく。
そこにはちみつを入れたものだから驚いてしまった。
「市販のパンケーキミックスは砂糖が入ってないからいつもはちみつを入れてるの。」
でも、珍しいね。いつも見ないのに。
どうやらパンケーキを気にしているのはバレバレだったようだ。
これを双子に伝えるかは少し悩んだ。
いくら同じ経験をしたとはいえ他人の思い出に軽々と立ち入ってよいものか。
口にしたらもとには戻せない。
でも少しでも近づけたなら。
きっとそれは寂しくて悲しくもあるけれど嬉しいことだと分かるのだ。
皆で作ろうなんて言われるとは思わなかったけど。
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作者名：lamerise | 作成日時：2018年3月11日 22時
