涙 ページ12
それからのことはあまり覚えていない。
目を開けたら自分の部屋の天井が見えた。
そして、涙。こないだぶりだ。
時計を確認すると午前の6時だった。
こっそり家を出て散歩に行く。
涼しい風がちょうど良かった。頭の中を整理する。
自分には、兄がいた。
そして目の前で事故に巻き込まれて死んだ。
追いかけっこをしていて飛び出したのだ。
昨日通ったような道で。
整理するとあっけなかった。
結局自分は現実から逃げていただけか。
兄を恋しく思った訳じゃない、
特に悲しいと感じた訳じゃない。
なのに、涙が止まらない。
矛盾している。
それからふらふらとしながら学校にいった。
皆に上手く説明できるかは分からない。
教室にいたくなくて屋上へ行く。
ごろんと寝っ転がると空がまぶしかった。
ふわっと甘い匂いがして人が増える。
右が海と空で左が唐草だ。
甘い匂いにつられて双子の話が頭によぎる。
「・・・・パンケーキの匂い、今ならわかりそう。」
「いや、御門にはまだ100年早いね!」
「「そうだそうだ」」
海はともかく、唐草までなんで同調してるんだ。
あぁでも、本当にこの3人は人の思いをどこまでも汲むんだな。
同じ痛みをしっているからだろうか。
「あのさ、」
ぽつぽつと話した。ゆっくり、自分の言葉で。
・・・なんとか話し終えた。
誰もなにも言わないから何だか気まずく感じて立ち上がる。
「・・・・・・・!」
皆の表情が見えた。あんな顔見たことがない。
胸が痛くなるくらい、優しい表情。
そっと腕を引かれてまた寝っ転がる。
「・・・隈ができてる」
「だから」
「今は眠ろう?」
同情でもなく、哀れみでもなく、ただひたすらに心配する感情だけが伝わってくる。
空がにじんでると思ったら自分がボロボロ泣いているだけだった。本当に泣き虫だ。
そして、ゆっくり目を閉じた。
御門の焦げ臭い匂いが段々薄れていくのを感じて安心した。
隣の空もそう感じているだろう。
昨日の帰り道で何かに取り憑かれたように走っていってしまったからまさかとは思ったけどね。
「さて、どうする・・・」
声をかけようとしたら空も唐草も寝ていた。おい。
まぁ、いいか。後のことを考えるのも面倒くさくなって目をつむった。
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作者名:lamerise | 作成日時:2018年3月11日 22時