【呪術廻戦】そういうつもりじゃなかった！

特別な一日の話 ページ34

『えっっっ！？！？』

寮の自室の片隅で、Aは突然ぎょっと声を上げた。お泊り会だと言って部屋に来ていた家入は、タバコの代わりの飴玉を転がしながら、はは、と笑う。

「やっぱ知らなかったか。明日だぞ、五条の誕生日」

『まっ、硝子ちゃん、何で今なの！？！？どどど、どうしよう、何も用意してない……！』

時計はとっくに23時を指している。開いているのはコンビニくらいなものだろう。シンデレラに負けず劣らず大慌てしているAを家入はどうどうと落ち着かせた。

「五条は筋金入りの坊っちゃんだ」

『う、うん』

「つまり並大抵のもんじゃ満足しない」

『……わ、私はどうすれば……！』

Aの脳裏に「けっ、こんなのがプレゼントかよ」と吐き捨てている五条が浮かんで消えた。何だかんだ文句を言いつつ受け取ってくれる気がすると思い直したからだ。彼らと出会って６ヶ月。奇天烈な３人を理解できてきたのかも、と笑みがこぼれる。
いや、Aに思い出に浸る暇は残念ながらない。縋るように家入を見つめれば、にやりと口角を上げた彼女と目があった。

「アイツが大喜びした挙げ句後方屈身３回宙返りするプレゼントがある」

『こうほ……？そんな技、今の体操にあったっけ？』

「知らん。13年後くらいに誰かやるんじゃない？……じゃなくて、どうする？やる？」

大切な同級生の誕生日を祝えるなら、命以外は差し出す覚悟である。Aはキリリ、と視線を鋭くすると、家入の手を取った。

『やる！！』



***



『……お待たせ？』

「別に待ってねーよ、おら、行くぞ」

翌日、高専の校門(と、呼べるのか？この鳥居は――…)に五条を呼んだから行け、との家入からの指令を受け、校門に向かうと、何だか高そうなブランド服を身に着けた五条が立っていた。Aは手首を掴まれ、てくてくと歩き出す。

『(……ど、何処に何のために行くんだろ……)』

家入は「行けばわかる」botとなし、偶然朝に遭遇した夏油も「私の誕生日にもそれが欲しいな」と言うばかり。その“それ”を知りたいのだが、五条を待たせるわけにもいかぬとそのまま来たのだ。

『あの、五条くん……』

「駅まで歩くぞ」

『了解しました』

とりあえず、駅に向かうらしい。五条の召使いに頼らず徒歩で行くのにも何か理由はあるのだろうか。運動？……あの最強が？と思うが、何処か嬉しそうに歩いている気がする五条に口出しする気は起きず、Aは横を並んで歩いた。

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