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こっちだよーと慣れた感じで病院内を進む大ちゃんに黙ってついて行く。


病院なんて来るのいつぶりだろ。




このいつ来ても冷たくてシーンとした感じがどうも好きになれないんだよな。





「2人とも、俺が先に入るから後から入ってきてね」


エレベーターを降りてすぐ、大ちゃんがある病室の前で立ち止まって振り返った。




病室のプレートを見れば『 伊野尾慧 』の文字。


いのお…

珍しい名前だな。





「伊野ちゃーん!来たよ!」


気づけば前に大ちゃんはいなくて、なにやら中で楽しそうな話し声が聞こえる。


光はまだしも、人と打ち解ける能力がまったくない俺が本当に来てよかったんだろうかと若干の後悔がよぎったが、来てしまったからには後に引けない。




「2人とも入ってー!」


…はあ、行くか。





「どうもっ、大ちゃんの友だちの八乙女光です!」


「薮宏太です、」





入って彼の顔を見た途端、一瞬俺の時が止まった。


だって、そこにいたのは、俺がよく夢で見るあの子だったから。


彼も驚いたような顔で俺を見ている。






「え、なに?薮ちゃんと伊野ちゃんもしかして知り合い?」



大ちゃんが不思議そうな顔で俺と彼を交互に見る。


あ、なんて説明したら…





「…いや、なんか俺の知り合いに似てるなって思ったんだけど、人違いだったみたい!」


彼がなんかすみません、とぺこっと頭を下げる。



「あっ、いや、こちらこそ、」


俺もあわてて頭を下げた。



とりあえず助かった…

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作者名:わんころもち。 | 作成日時:2022年9月9日 20時

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