Wonderland Dream (ページ1)

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まただ。

また、あの子。

こっちへおいで、遊ぼうよ、と手を伸ばしている。

見ているだけで、ああ大丈夫だと思わせてくれるあの笑顔。

俺はその手を取って、いつものように2人で歩き出す。

今日はなにするっ？と楽しそうにその子が笑う。

ああ、この時間がずっと続けばいいのに……

…ﾋﾟﾋﾟｯﾋﾟﾋﾟｯ

「はっ！」

突然鳴り響くアラームの音に、まるで漫画のようにぱっと起き上がる。

俺はまた、いつものあの子の夢を見ていたらしい。

「誰なんだろうな、」

たまに俺の夢に現れる、笑顔が可愛い男の子。

きっとあの子は毎日幸せなんだろう。

俺なんかと違って。

…まあ、どうでもいいか。

いつものように顔を洗って、服を着替えて、弁当を用意する。

ついでに、朝ご飯も。

高校生にしては俺の朝って割と忙しいほうだと思うんだけど、3年にもなればもう慣れてしまった。

いつからだろうか、この世界になんの希望も見出さなくなったのは。

.

「…行ってきまーす」

どうせ返事はないとわかっていながら、一応そう呟く。

行ってらっしゃい、と母さんが笑顔で見送ってくれていたのは、もう何年前だろうか。

思い出せないくらい昔なのは確かだ。

俺には普通の家族にあるであろう楽しい思い出がまったくと言っていいほどない。

こうなったのは、俺が幼稚園のときに両親が離婚してから。

父さんがいなくなって、母さんは変わった。