夢小説書いてんのバレた件。【角名倫太郎】

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電話越しに聞こえる声は、
本当の声じゃないとかなんだとか。



何万通りと用意された声から似ているものを流しているらしい。



そんなもんがあるなら
Aの声用サンプルを使って、好き勝手都合のいいことを言わせたいもんだ。





だってリアルのAは、

俺のことを覚えてないとか
本当の彼氏じゃないとか

愛しい声で心をえぐるようなことを言ってきやがる。





俺はいきなり関西に引っ越しすることになった。

稲荷崎は中高一貫。
早くから俺に目をつけていた稲校バレー部が声をかけてくれた。

ご家族の皆さんがよければ、秋から来てもろても全然ええですよなんて、関西人はせっかちだと思った。

両親もかなり楽観的で
行きたかったらいきな、とだけ。



中学の間は関西に住む親戚の家でお世話になった。

高校からは部活で帰る時間が遅くなったり、
何かと気を使うことが増えたから一人暮らしに。





そんなことはどうでもいい。

前で表彰されていたから、なんて言ったけど
俺はAとは一度だけ喋ったことがあった。







言語の壁とはどこにでもあるわけで、
俺はこの標準語のせいで少しだけ浮いている時期があった。



特に気にせず相手にはしなかったが、
やっぱり言われて気分の良いものではない。







ほら、あいつ。
えらいお上品な言葉つこてはるなあ。

俺らこんな喋り方しとったら馬鹿にされてまうわ。







聞こえてんだけど。
と思いながらいつも通りスルーしようとしたら、









『方言なんただの飾りで、大事なんは内容やろ？

あんたらのなんの生産性もない、スッカスカなことばっか喋っとったらそら馬鹿にされるわ。

現に私はあんたらのこと、あほやなあ思とるで』







端的な言葉で、今思い返せば北さんみたいな。

平気な顔して二人組の男子に正論パンチを飛ばしたのがAだった。

何も言い返せず、そいつらは去っていった。









「…ありがとう。かっこいいね」



『思たこと言っただけやで。
ああゆうん嫌いやねん。



やし、私標準語好きやで。
かっこええやん』









その笑顔に何かを掴まれた。

単純な俺は、その時からAのことが気になるようになってしまった。









これはAが壇上に上がる前の話。

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