『』 ページ1
.
古いインクの匂いが心地いい。
微かに聞こえる足音と紙のすれる音から、今日も図書室の利用者は少ないことがわかる。
今日も平和だ。
なんてくだらないことを考えながら、握られたシャーペンを再び走らせる。
『我慢の針がついに振り切り、俺は思わず向かいに座る彼女の手を握る。
愛しいその顔が目を丸くさせて、小さく驚きの声を漏らした。
「俺、お前と一緒に___________」』
「あ、それ今日の更新分の原稿?
ネタバレ食らっちゃった」
『!、っは?』
思わず大きな声が出て、静寂に包まれた図書室に響く。
相変わらず少ない利用者であったことが不幸中の幸いだ。
え、まって。さっきの声のことは置いといて、
思いもよらぬ事態に頭が混乱する。
目の前の男__角名倫太郎。
こいつがなんで私の小説のことを知っているのか、
ほかの人に喋ったのか、
聞きたいことは山ほどあるが
とりあえず今はなんとしてでも小説のことはしらばっくれたい。
『え、や、なんのこと?
私、課題しとっただけやけど』
嘘ではない。
横には課題のノートは広げてある。
さっきまで手を動かしていたのは小説の下書き用のノートではあるが。
瞬時にここで借りた本の下に隠しながら、取り繕った笑顔で問いを投げた。
「さっきまで書いてたの、昨日の続きなんじゃないの?
もどかしいとこで終わったから気になってたんだよね。
空閑先輩との、ん」
自分の創作キャラの名前を出されて、思わず角名くんの口を全力で抑える。
しまった。
こんなことしたら、その小説の作者は自分だと名乗っているようなもんだ。
口をふさがれた目の前の顔がニヤリと目を細める。
『………なんで知っとるん』
「んーー? ないしょ」
前言撤回、
平和な日々なんてもんは__このキツネに食われてしまった。
252人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「稲荷崎」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ツナ缶。(プロフ) - 架奈さん» ありがとうございます!優しいコメントがすごく私の励みになります…!いい作品にできるよう頑張ります! (2021年2月14日 9時) (レス) id: e17d6a7cee (このIDを非表示/違反報告)
架奈(プロフ) - 受験勉強お疲れ様です。無理しない程度に頑張ってください!更新楽しみにしています! (2021年2月13日 9時) (レス) id: 3071dcd1d5 (このIDを非表示/違反報告)
ツナ缶。(プロフ) - おかか。ですかさん» 更新遅れてすみません!いつもコメントしてくださって本当に嬉しいです!受験も更新も頑張ります!! (2020年11月14日 12時) (レス) id: e4f51373a6 (このIDを非表示/違反報告)
ツナ缶。(プロフ) - りんさん» 楽しみにしてくださっている方がいて本当に嬉しいです!受験が終わるまでは亀更新ですが、気長にお待ち下さい(>_<) (2020年11月14日 12時) (レス) id: e4f51373a6 (このIDを非表示/違反報告)
おかか。ですか(プロフ) - おー!ずっと更新待ってました!!受験頑張ってください!!月曜日楽しみに待ってます! (2020年11月14日 9時) (レス) id: 0ecde9d0b0 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:ツナ缶。 | 作成日時:2020年8月15日 3時