第２話「カワタ」 ページ3
(瑠璃目線)
愛しくて、愛しくて。
こんなこと言ったら怒られてまうやろけど、
智洋くんの出征の日、
悲しくて、悔しかった。
「お国」に、「戦争」に、
智洋くんが連れていかれるようで。
この国のことが、私はあまり好きになれんかった。
戦争なん、人の心を傷つけるだけのもので、
何の良いこともないから。
“銃後”の生活は苦しいし
大好きな智洋くんは兵隊に持っていかれるし。
まぁ、それも、智洋くんの選んだことやから止められもせぇへんけどね。
応援、しないとあかんのかな。なんて。
嫌やけど、
それ言うたらみんなに叱られる。
非国民、て罵られる。
せやから………
もっとちゃんとしなきゃ、って。
こういう世の中なんだ、仕方ない。
そう思わないと
やっていけなくて、今にも泣き出しそうで。
毎日遊んでいたあの頃は、
楽しくてたまらんかった
かけっこしたり、模型作ったり、
私は女子だったけど、遊びに女子らしいものなんかひとつもなくて。
思えば、その頃から、戦争の影はしのび寄って来てたんかもしれん。。。
時が進むにつれ、智洋くんは他の男子とかと遊ぶか、勉強するかが多くなって。
その後は、生活も厳しくなって、
私達は勉強さえさせてもらえんくて。
関わりも徐々に少なくなって。
だから、ずっと辛くて。
そして、今。
智洋くんは、どう思っているんかな、なんて。
そして、涙を堪えながら、
見送りの言葉を口にした。
『おめでとう、いってらっしゃい、智洋くん』
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作者名：重瀧智星@ゆめちせ♪ | 作成日時：2015年7月20日 21時
