83.己+自分≠道化師 ページ10
乱歩は携帯をたたみ、衣袋にねじ込むと、福沢に顔を向けて話しだす。
眉間に皺を寄せて少し口を尖らした様相は、だって〜と言い訳を始める子供のようであったが、その表情は直ぐに真剣なものに変わる。
「太宰は解っていないみたいだったけど、事件に使われている異能力の強制力はそこまで強くない。
「太宰を向かわせたかったのか。ならば何故そのまま云わない。」
福沢は社員を信頼している。Aの無事は、福沢も望むところであるため、Aを蔑ろにするような節のある乱歩の発言に、喉に小骨が刺さっているような引っかかりを感じていた。
「太宰には気づいてもらわないと、いい加減。」
そんな乱歩の言葉を、全て飲み下せた訳ではなかったが、福沢はそれ以上問わなかった。乱歩の事も信じている。
太宰とAと鏡花は、ポートマフィアより来た社員ではあるが、人の為に動ける強さと心を持った者たちである。しかし、どこか未熟な者たちでもある。
乱歩は屹度、太宰とAにもどかしさを覚えたのだろう。
***
「……」
電話が切れ、探偵社の会議室は沈黙に包まれていた。太宰の答えを待っていた。ある者は先輩として、ある者は後輩として。そしてある者は、太宰の答えに対して、如何なる対応をすべきか頭を巡らせて待っていた。
「ふぅ……」
太宰は、こればかりは腹を決めて、もう一度推理することにした。今だけは、いつもの自分を演じない。
依頼の連続失踪、行方不明、そして戻って来た者の記憶消滅。
状況からすると、Aは計画的に連れ去られた。そして、自力での脱出は不可能。
乱歩さんは何故私をあんなにも焚きつけたのだろうね。
「あの人には、恩がある。」
太宰が黙考している最中、鏡花がそう切り出した。
「私も、できる事をしたい。」
一番新しい社員。その入社試験では、少し手の込んだことをした。そういえば、Aの試験は……
嗚呼、そうか――
「勿論だとも。じゃあ、国木田君、この事件の目標にAの奪還を加えて佳いかい?」
珍しく自信なさげに太宰は云った。
「乱歩さんも仰っていただろう。お前に任せる。」
「では、」と太宰は白板の前に立ち、文字を書き足した「これより我々はAの奪還と敵の捕捉を同時に完結させます。」
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―――
次また蜷場のとこいきます
次回:4/29
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サヤカ(プロフ) - 柚宇さん» 好き……なんですかねーそうだといいな〜〜!ありがとうございます❣頑張ります!! (7月29日 19時) (レス) id: 2320ebad55 (このIDを非表示/違反報告)
柚宇 - 太宰さん、信者ちゃんのこと好きなのかなー?んーわからない!けど大好きです!この作品とっても面白いのでこれからも頑張ってください!! (7月22日 16時) (レス) @page28 id: 619c9e8827 (このIDを非表示/違反報告)
サヤカ(プロフ) - 百華夜さん» 太宰さん!!来ました!!!やっっと…!!ありがとうございます🙏 (6月16日 22時) (レス) id: 6e87b82d01 (このIDを非表示/違反報告)
百華夜(プロフ) - 太宰さん!早く信者ちゃん助けに来いやぁぁ!!此のお話凄く好きです! (2023年4月27日 17時) (レス) @page10 id: 4a0468ad2f (このIDを非表示/違反報告)
サヤカ(プロフ) - 太信愛を感じるっっ!だざいさーーーーーーーーん!!!!www(ありがとうございます!) (2023年3月4日 8時) (レス) id: 560ee3c2e1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:サヤカ | 作成日時:2023年2月1日 0時