検索窓
今日:19 hit、昨日:8 hit、合計:16,749 hit

83.己+自分≠道化師 ページ10

乱歩は携帯をたたみ、衣袋にねじ込むと、福沢に顔を向けて話しだす。
 眉間に皺を寄せて少し口を尖らした様相は、だって〜と言い訳を始める子供のようであったが、その表情は直ぐに真剣なものに変わる。

「太宰は解っていないみたいだったけど、事件に使われている異能力の強制力はそこまで強くない。一寸(ちょっと)脳の深い部分を突けば、記憶は戻る。でも、異能力なだけに、口でいうほど簡単じゃない。」

「太宰を向かわせたかったのか。ならば何故そのまま云わない。」

 福沢は社員を信頼している。Aの無事は、福沢も望むところであるため、Aを蔑ろにするような節のある乱歩の発言に、喉に小骨が刺さっているような引っかかりを感じていた。

「太宰には気づいてもらわないと、いい加減。」

 そんな乱歩の言葉を、全て飲み下せた訳ではなかったが、福沢はそれ以上問わなかった。乱歩の事も信じている。
 太宰とAと鏡花は、ポートマフィアより来た社員ではあるが、人の為に動ける強さと心を持った者たちである。しかし、どこか未熟な者たちでもある。
 乱歩は屹度、太宰とAにもどかしさを覚えたのだろう。

***

「……」

 電話が切れ、探偵社の会議室は沈黙に包まれていた。太宰の答えを待っていた。ある者は先輩として、ある者は後輩として。そしてある者は、太宰の答えに対して、如何なる対応をすべきか頭を巡らせて待っていた。

「ふぅ……」

 太宰は、こればかりは腹を決めて、もう一度推理することにした。今だけは、いつもの自分を演じない。

 依頼の連続失踪、行方不明、そして戻って来た者の記憶消滅。
 状況からすると、Aは計画的に連れ去られた。そして、自力での脱出は不可能。

 乱歩さんは何故私をあんなにも焚きつけたのだろうね。

「あの人には、恩がある。」

 太宰が黙考している最中、鏡花がそう切り出した。

「私も、できる事をしたい。」

 一番新しい社員。その入社試験では、少し手の込んだことをした。そういえば、Aの試験は……

 嗚呼、そうか――

「勿論だとも。じゃあ、国木田君、この事件の目標にAの奪還を加えて佳いかい?」

 珍しく自信なさげに太宰は云った。

「乱歩さんも仰っていただろう。お前に任せる。」

「では、」と太宰は白板の前に立ち、文字を書き足した「これより我々はAの奪還と敵の捕捉を同時に完結させます。」




―――
次また蜷場のとこいきます
次回:4/29

84.魅了される→←82.相談(次回来週)



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.8/10 (53 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
462人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

サヤカ(プロフ) - 柚宇さん» 好き……なんですかねーそうだといいな〜〜!ありがとうございます❣頑張ります!! (7月29日 19時) (レス) id: 2320ebad55 (このIDを非表示/違反報告)
柚宇 - 太宰さん、信者ちゃんのこと好きなのかなー?んーわからない!けど大好きです!この作品とっても面白いのでこれからも頑張ってください!! (7月22日 16時) (レス) @page28 id: 619c9e8827 (このIDを非表示/違反報告)
サヤカ(プロフ) - 百華夜さん» 太宰さん!!来ました!!!やっっと…!!ありがとうございます🙏 (6月16日 22時) (レス) id: 6e87b82d01 (このIDを非表示/違反報告)
百華夜(プロフ) - 太宰さん!早く信者ちゃん助けに来いやぁぁ!!此のお話凄く好きです! (2023年4月27日 17時) (レス) @page10 id: 4a0468ad2f (このIDを非表示/違反報告)
サヤカ(プロフ) - 太信愛を感じるっっ!だざいさーーーーーーーーん!!!!www(ありがとうございます!) (2023年3月4日 8時) (レス) id: 560ee3c2e1 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:サヤカ | 作成日時:2023年2月1日 0時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。