82.相談(次回来週) ページ9
〈ふ〜ん……なるほどね。〉
電話口からの声は、余裕を含んだ台詞でありながら、声音は至って真剣なものだった。
〈ねぇ。なんで僕の助言が必要なの?〉
解っているのに、それをわざと隠して僕に相談した理由は……
〈いいか太宰、僕を言い訳にするな。〉
名を呼ばれ、乱歩にしては厳しい口調でたしなめられた太宰は、硬直していた。周囲には気づかれないほど小さく髪を揺らし、瞳孔が仄かに、一瞬広がりを見せた。
意表を突かれたのだろう。
〈太宰、お前の事件だ、僕はこれ以上事件には口を出さない。……国木田。〉
はいっ! と、動揺から少し上ずった国木田の声が、会議室に響いた。太宰は画面を見つめて動かない。
敦は、そんな太宰を見て、平然としたあの眼差しや台詞の多くが、虚勢であったのではないか、と……太宰がA対して持っている、見ている側に得体のしれない感覚をうえ付ける感情は……と固唾をのんだ。
〈Aを探偵社に戻すか戻さないか、太宰に決めさせるんだ。〉
国木田はそれに戸惑いながら了承した。
それと、太宰。と乱歩は再び口を開いた。
〈太宰、僕は武装探偵社という組織はAがいなくとも成り立つと思ってる。だから、別に無理に武装探偵社に連れ帰らなくてもいい。〉
どこかから、気泡が弾ける音がした。しかし、鍋の中で弾けるような軽いものではなく、地下深くから上がってきた岩礁が破裂するような、重く、力強く、しかし気泡であるが故の儚さも含んでいた。
〈でも、それは計算上の話で実際は違う。〉
太宰は、顔を上げなくとも、他の社員たちがどんな表情をしているか解った。皆辛いのだ。
事件の解決と仲間の救出、国木田はどちらを優先するか葛藤した末にああ宣言した。皆それに同意したが、敦のような不安を持つ者もいただろう。
「乱歩さん、ありがとうございます。ところで、いつお帰りに?」
〈・・・・・・明後日だけど。〉
「そうですか。では、それまでにこの件を解決してみせましょう。」
〈明日でもいいんだよ?〉
乱歩はまるで悪戯っ子のような軽い口どりで云った。先程迄の真剣な空気が噓のようだった。
***
——ピッ
「乱歩。何故ああも突き放した言い方をした?」
武装探偵社の社長である福沢は、乱歩のすぐ横でずっと会話を聞いていた。
「えぇ? だって、太宰には初手にAと顔を合わせてもらわないといけないんだ。」
「何?」
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サヤカ(プロフ) - 柚宇さん» 好き……なんですかねーそうだといいな〜〜!ありがとうございます❣頑張ります!! (7月29日 19時) (レス) id: 2320ebad55 (このIDを非表示/違反報告)
柚宇 - 太宰さん、信者ちゃんのこと好きなのかなー?んーわからない!けど大好きです!この作品とっても面白いのでこれからも頑張ってください!! (7月22日 16時) (レス) @page28 id: 619c9e8827 (このIDを非表示/違反報告)
サヤカ(プロフ) - 百華夜さん» 太宰さん!!来ました!!!やっっと…!!ありがとうございます🙏 (6月16日 22時) (レス) id: 6e87b82d01 (このIDを非表示/違反報告)
百華夜(プロフ) - 太宰さん!早く信者ちゃん助けに来いやぁぁ!!此のお話凄く好きです! (2023年4月27日 17時) (レス) @page10 id: 4a0468ad2f (このIDを非表示/違反報告)
サヤカ(プロフ) - 太信愛を感じるっっ!だざいさーーーーーーーーん!!!!www(ありがとうございます!) (2023年3月4日 8時) (レス) id: 560ee3c2e1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:サヤカ | 作成日時:2023年2月1日 0時