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88.人間らしさ ページ15

***


 初めは、探偵社に少しヒビでも入ればいいと思っていた。


 記憶を消したらとっとと探偵社に戻す予定だった。


 でも、あの子の記憶の宝石は、息をするのを忘れる程美しくて、艶やかで、僕の様な愛に飢えた人間を惑わす代物だった。


 少しだけ、その愛に触れてみたくなった。引き戻せなくなるような予感はあったけど、欲が勝った。結局、最初から我慢なんてできていなかったんだ、僕は。


 こんな(リーダー)でごめん。これから僕はいなくなる、つくづく最悪な長だ。


***


 静かになった。

 あたりは走っていた二人の荒い呼吸音だけで、先刻までのような、掘っては埋めての工事現場の縮小版みたいな音はない。


「蜷場......、どうした?」


 困惑気味なNo.2さんは、私を降ろして座り込むハルテさんに詰め寄った。

 私でも彼が今から云いそうな事は解るから、屹度No.2さんもそれを理解したうえで云わせまいと圧を掛けているんだろう。


「嗚呼、お前に任せるよ。ZAKUはお前に任せる。」


「っクソ......」


 未練などないといった、すっきり諦めた顔で、しかし、長の風格を少し滲ませたその言葉に、取り付く島がない事をNo.2さんは悟ったのか、悔しそうにしながら土の壁に消えていった。


『ハルテさん、私が云うのもなんですけどね、独り言だと思って聞いててください。」


 面と向って云うのも気まずいので、あぐらをかいて座る彼の、先刻まで私を抱えていた腕でも見ながら云うとしよう。

『あなたがとっても優しかったのは覚えています。その優しさに例え演技が含まれていたとしても、心から純粋な愛を望んだあなたになら、きっと誰かが振りむいてくれると私は思っています。』

 私は叶えてあげられないけれど。

『諦めるにはまだ若いと思いますよ』


「……ははっ、本当にそれを君が云うのか。ふふ、無責任な人だね。ああ、本来の君は、こういう人なんだね。」

 なぜ笑うのだ。怒ってくれていいよ。もしかして、怒り笑い?

「もっと好きになった」

『えっ』

「僕ね、君にキスをしたよ。」


 ハ? すぐには理解しがたい事を云われ固まる。その隙にというか、いつの間にか彼の手は私の首の一点を押さえていた。あ、けいどうみゃく......と思う頃には意識は暗転していた。

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サヤカ(プロフ) - 柚宇さん» 好き……なんですかねーそうだといいな〜〜!ありがとうございます❣頑張ります!! (7月29日 19時) (レス) id: 2320ebad55 (このIDを非表示/違反報告)
柚宇 - 太宰さん、信者ちゃんのこと好きなのかなー?んーわからない!けど大好きです!この作品とっても面白いのでこれからも頑張ってください!! (7月22日 16時) (レス) @page28 id: 619c9e8827 (このIDを非表示/違反報告)
サヤカ(プロフ) - 百華夜さん» 太宰さん!!来ました!!!やっっと…!!ありがとうございます🙏 (6月16日 22時) (レス) id: 6e87b82d01 (このIDを非表示/違反報告)
百華夜(プロフ) - 太宰さん!早く信者ちゃん助けに来いやぁぁ!!此のお話凄く好きです! (2023年4月27日 17時) (レス) @page10 id: 4a0468ad2f (このIDを非表示/違反報告)
サヤカ(プロフ) - 太信愛を感じるっっ!だざいさーーーーーーーーん!!!!www(ありがとうございます!) (2023年3月4日 8時) (レス) id: 560ee3c2e1 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:サヤカ | 作成日時:2023年2月1日 0時

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