XVII ページ22
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走った、とにかく速く。千切れてもいいと思うくらい足を前に前に進める。
太宰さんからの連絡には続きがあった。織田さんが危ないと。あの織田さんが危ないと
位置は、人の寄り付かない廃墟。何が起きているのか。如何して私が呼ばれたのか、想像は
いつもの定食屋を通り過ぎた。
大破した車。開けっ放しの扉と皆の部屋の窓。警察。なにがあったかなんて。知りたくない。
人だかりがひどく醜く見えた。
見世物じゃない
雨粒が目にはいる。不思議と痛みは感じない。
途中すれ違った青年、傘で顔は見えないけど、鞄を大事そうに抱えている。
急に止まり、違和感を感じる程の視線を私に向けてきた。それが、これから向かう先に何が待っているのか教えられているような気がして、とても、怖かった。
『織田さんっ!!』
見たくない、考えたくない。
足を、手を動かす事ができてる筈なのに力が入ってない気がして、倒れ込むように駆け寄った。
間に......合わなかった。
血だまりが広がって。その中に、彼は居た。もう瞼は開いてない、微動だにしない。
呼吸も......
————「今日も居るのか。そこは危ないから、せめて此処にしなさい。」
優しい声も
————「幸介、克巳、優、真嗣、咲楽。これは俺か? うまく描けてるな。あの子たちも喜ぶ」
撫でてくれた温かい手に柔らかい瞳も
短い時間に詰め込んだ思い出がめぐってめぐって、浮かんできえて
『......っう...ごめんッッ。ごめんねおださんっ......おださんっっ!』
優しくしてくれてありがとう。皆を護れなくてごめん。あなたに......あなたに何にも返せなくて......
にじむ視界を如何にかしたくて袖で擦っている時、初めて太宰さんの存在に気が付いた。
「A」
『だざいさ、』
「静かに。聞いてくれ」
返事の代わりに首を思い切り縦に振った。鼻水で声が上手く出せない。
「織田作は、子供たちの処にいったんだ......」
太宰さんは、死後の世界なんてものを信じていただろうか。
「私は............」
沈黙は長かった。
「君は暫く身を隠した方が佳い。」
『っはい......』
太宰さんの顔は見なかった、見れなかった。
————私は意気地なしだ。
数分か、はたまた数十分かして、太宰さんの部下と思われる黒服が、太宰さんの指示で織田さんを運んでいった。
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次回更新予定日:6月26日
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サヤカ(プロフ) - ゆきさん» 優しすぎる!!(泣)大好きと言ってくださりありがとうございます……(嬉泣) (2022年6月18日 0時) (レス) id: 2320ebad55 (このIDを非表示/違反報告)
ゆき(プロフ) - サヤカさん» いえいえ!大好きな作品の手助け(?)が出来るなら本望です! (2022年6月17日 23時) (レス) @page16 id: 4e362c00f0 (このIDを非表示/違反報告)
サヤカ(プロフ) - ゆきさん» ゆきさんありがとうございます!助かりました。指摘させてしまいごめんなさい、自分で気付くべきですよね。何から何まですみません。コメントありがとうございました。 (2022年6月16日 21時) (レス) @page16 id: 2320ebad55 (このIDを非表示/違反報告)
ゆき(プロフ) - いづれもじゃなく、いずれもだと思いますよ (2022年6月16日 19時) (レス) @page16 id: 4e362c00f0 (このIDを非表示/違反報告)
サヤカ(プロフ) - シリアスいいですよねぇ......書くのも楽しいです(皆ごめん皆ごめんほんとごめん) (2022年6月14日 15時) (レス) @page15 id: 560ee3c2e1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:サヤカ | 作成日時:2022年5月10日 10時