降谷零 中編小説＊3

↑続編【snow】＊上 ページ27

『ーーー！零！！』





誰かが俺を呼ぶ声が聞こえて目が覚めた
目を開けると光が眩しくもう一度目を閉じた


今度はゆっくりと目を開けると
涙を流して俺の名前を呼ぶ女がいた


彼女は嗚咽混じりに『良かった』と繰り返し言いながら顔を両手で覆って泣いていた





「誰だ？」





そう言うと彼女は目を見開いて俺を見る



『れ、い？』

「降谷さん？何言って、、」

「風見か、彼女は？」



彼女の後ろに見慣れた男、俺の部下の風見がいて彼女の事を聞けば固まってしまった



辺りを見渡して見るとここは病室のようで俺の頭に包帯が巻かれていて、左手にはギブスが着けられている



確かFBIやCIAと協力して黒の組織の本部へ乗り込んで、、、それからの記憶が思い出せない





病室に新一くんと医者が入ってきた





記憶喪失と医者に診断された



記憶の一部分が欠けているらしい


組織に乗り込んでからの事と

彼女の事について



俺と彼女がどんな関係だったのか風見や新一くんに聞けば上司と部下だと答えが返ってきた


それだけじゃないような気がして彼女に、桜井に聞けば「それだけですよ」と苦しそうな顔で言われてしまいそれ以上聞けなかった





思い出そうとしても霧がかかったように
何も思い出せない





入院して2ヶ月が経った日





白い雪が降った



何故か胸が痛んだ



夢に誰かが出て来た
知っているようで知らない



雪の中で俺の名前を呼んでいた





『零』



『愛してる』





彼女に俺は誓った





「俺がーを幸せにする」





顔も名前も思い出せない

けれど

俺の中にいる誰かは消えない





白い雪を見るたびに

胸の痛みが強くなる








組織が壊滅してから2年が過ぎて

組織以上に危険な仕事は無く定時で上がれる日が増え落ち着いてきた頃

仕事の帰にり久しぶりに家の近くを歩いてみた
見慣れた道に見慣れた公園



雪が積もって白くなっているベンチに誰かが座っていた、その後ろ姿に覚えがある





『愛してる』





聞こえてきた声が言葉が

棘のように胸に刺さった



肩を震わせて泣いている桜井を無意識に抱きしめれば胸の痛みが和らいだ



俺が思い出さなければいけない事は彼女の事で
俺と彼女は上司と部下の関係だけじゃないだろう





きっと彼女は俺のーーで









俺の？





俺の何だ？









『零』








白い雪の中



彼女の泣き顔が頭から離れない



哀しそうに寂しそうに





俺の名前を呼ぶ

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